研究課題
マウス体性感覚野にて感覚シナプス入力を2光子イメージングにより可視化して、その時空間的な特性を解析した。その結果、感覚入力パターンは自発活動による入力パターンと高い類似性を示すとともに、樹状突起上で近傍に位置するスパインは同期した入力を受け取る確率が高いことを明らかにした。このことは、感覚情報が樹状突起上でクラスター状に分布することで、分散して分布する場合と比べてより効率的に複数の種類の刺激情報をコードすることに役立っていると考えられる。また、感覚情報がこのような精緻な回路によって処理されていることから、感覚経験に依存した過程、すなわち経験依存的可塑性によってシナプス入力のクラスター化が形成されると考えられる。そこで次に、感覚遮断によってこのシナプス入力様式がどのように変化するかを解析したところ、感覚遮断した動物では、正常な感覚経験をした動物と比べて、離れたスパインでも同期した入力を受けることが明らかとなった。感覚遮断により、皮質の機能マップが障害されることが知られていることから、入力のクラスター化が正常な感覚マップの形成に重要であることが示唆される。これまでの実験は、技術上の制約から全て麻酔下の動物で行ってきたが、脳の活動状態は覚醒時と麻酔下では大きく異なるため、観察結果が麻酔下特有の現象である可能性も否定できない。そこで、次に、覚醒状態のマウスにおいてもシナプス入力を可視化できる実験系の確立を目指した。これまで、ホールセル記録下でイメージングを行っていたが、覚醒状態では体動などで長時間の記録を保持することが困難なため、最近開発された新しい高感度のカルシウムセンサータンパク質を用いて、ホールセル記録すること無くシナプス入力を可視化する実験系を確立した。今後は、この実験系を用いて、覚醒状態のマウスにおける感覚シナプス入力の時空間分布の解析を行なう。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究実施計画について、計画通りに進行している。
これまで、麻酔下のマウスにおいて感覚刺激に対するシナプス入力パターンの解析を行ってきたが、活動パターンは麻酔の状態によって変化することが考えられるため、今後は、覚醒状態のマウスで同様の実験を行い、動物が能動的知覚を行っている際のシナプス入力パターンを明らかにしていく。
次年度使用額が生じたが、比較的少額であった。無理に不必要な物を購入せず、次年度に必要な消耗品を購入するために残したことによる。
消耗品費に当てる。少額であるため全体の研究費使用計画に変更はない。
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Nature Methods
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