研究課題/領域番号 |
25290004
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
那波 宏之 新潟大学, 脳研究所, 教授 (50183083)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 中脳ドパミン神経 / 神経発達 / 自発発火 / セロトニン / ユニット解析 / RNA‐SEQ |
研究実績の概要 |
本研究は中脳ドパミン神経の活動発達の制御メカニズムを、内的要因と外的要因に分けて解析することで、中脳ドパミン神経の可塑性を評価するという目標を有する。 1)発達中のドパミン神経の自発発火の頻度、パターン変化の制御因子の解明;動物数を増やして3週(幼若期)、6週(思春期)、12週(成熟期)の黒質ドパミン神経の発火頻度、バースト頻度を麻酔下でユニット解析した。どの活動指標も3週ー6週にかけて上昇し、6週ー12週にかけて低下した。同様の解析をシナプス入力が制限されているスライス標本でも実施した。発達に伴い規則性のみが上昇する傾向にあった。これは観察された内因性Ih電流の増加に由来すると推測された。したがってin vivo で観察された活動変化は、興奮性や抑制性入力という外因性変化を反映するものと推定された。 2)ドパミン神経のシナプス分化・発達可塑性のレベルの解析;セロトニンに対するドパミン神経の反応性を、発達段階を追ってスライス標本にて比較、検討した。黒質ドパミン神経活動は3週、6週、12週いずれの時期においても増加傾向した。一方、腹側被蓋野のドパミン神経の反応は多様で、上昇する細胞から、低下する細胞まで千差万別であった。3週、6週、12週で比較すると、幼若期でのみ活動が上昇する細胞が大多数を占めることわかり、腹側被蓋野のドパミン神経のセロトニン感受性は、生後変化することが判明した。 3)発達をおってドパミン神経細胞に発現する遺伝子群の網羅的同定;発達にともなう発火活動変化の原因を解明するべく、シングルセルレベルでのRNA‐SEQを計画した。レーザーマイクロダイセクション法により十分量のRNAをドパミン神経から抽出できた。しかし計画のSMARTeという方法では、シクエンスライブラリーにゲノムDNA増副産物が混入していることが判明した。これを解決すべく、本課題を次年度へ持ち越した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
発達をおってドパミンの神経活動をin vivo麻酔下ユニット記録できたこと、ならびに、電極の安定性の問題により遅れていたin vivoの無線ユニット記録システムがようやく駆動できるようになったことは、重要な前進である。 一方、単一ドパミン神経細胞からのRNA―SEQによるプロファイリングは、予定外に多くの問題を抱えている。レーザーマイクロダイセクション法により、ドパミン神経細胞だけを顕微鏡下で単離できるようになったのはよかった。しかし、既存の極微量サンプルから次世代シークエンサーライブラリーを合成する方法(SMARTe)では 混在するゲノムDNAもライブラリー化されていることが判明した。この問題点は原法では指摘されておらず、DNAase処理、Exonuclase処理などでその問題点を改善する方向で、引き続き、その改善を模索している。
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今後の研究の推進方策 |
in vivoの無線ユニット記録システムが運用できるようになったので、麻酔下のユニット記録で観察できていた思春期前後に起きるドパミン神経活動変化を、free-movingの生理的条件で再確認をしたい。加えて、ユニット記録で判明した発達中のドパミン神経のセロトニン感受性変化をもたらした責任受容体分子を同定する計画である。また、最終年度には、ドパミン神経細胞から、なんとかシングルセルレベルのシークエンスライブラリー合成を完成させ、内因性の発達変化要因となる遺伝子群も見出すことで、上記のドパミン神経発達にともなう生理学的変化の内的分子基盤にも迫りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
RNA-SEQ、無線によるユニット解析等 一部の実験計画に技術的問題より 遅れが生じているため。
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次年度使用額の使用計画 |
当該実験計画を次年度に実施する。
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