研究課題/領域番号 |
25290006
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
宋 文杰 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (90216573)
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研究分担者 |
竹本 誠 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 助教 (20543408)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 聴覚皮質 / 内側膝状体 |
研究実績の概要 |
本研究では、霊長類のモデルとしてマーモセットを用い、その聴覚視床皮質間神経回路を解明することを目的としている。昨年度まで、研究を行うための環境を整備し、麻酔、手術、光イメージング法の確立、およびトレーサ実験を、それぞれ単独では、ある程度の成功を修めた。しかし、本年度の前半において、安定して実験結果を得ることは出来なかった。そこで、後半においては、手術を2段階に分けることで、はじめてイメージングの結果と、トレーサによる結果を同一個体でデータを得ることに成功した。本年度の主な結果は以下のようになっている。1)ケタミンとキシラジンの混合比を工夫し、さらに体温を連続的にモニターして、安定的に麻酔をコントロールすることができるようになった。2)イメージング実験の前に、側頭頭蓋骨を露出させ、頭部固定金具を取り付ける手術をまず行うことで、イメージング後の動物の状態を著しく改善出来た。また、電気メスの使用と切開組織のデンタルセメントによる固定も動物の状態の改善に繋がったと考えられる。3)2)の術後、1週間で動物が完全に回復し、それを用いれば、イメージングのための手術時間が短縮でき、実験の成功に繋がった。4)マーモセット聴覚野のイメージングには、ブルーダイより、レッドダイの染色がより均一であった。イメージングの結果、聴覚野のコア領域やベルト領域と思われる領野は同定可能であったが、パラベルト領域の同定は困難であった。5)同定した異なる領野に4種類のトレーサを同一の個体に注入し、4重染色を試みたが、CTB488とCTB555が内側膝状体の細胞を良く染色した一方、CTB647による染色は弱かった。また、フロロゴールドによるラベルは見られなかった。 以上の結果から、本研究を行う上での技術的な問題はほぼ解決できた。次年度でデータの蓄積と論文発表を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下に述べる幾つかの理由があった。1)マーモセットにおける電位感受性色素によるイメージングは世界で初めての試みで、色素の選択と染色方法の確立に時間を要した。2)マーモセットの購入が一頭あたり50万以上で、極めて高価であるため、頻繁に多くの実験を行い、方法を改善していくことは予算的に困難である。3)1頭の動物からできるだけ多くのデータを取得するために、機能イメージングのデータと神経回路のデータの両方の取得を試みており、長時間の手術とイメージング実験で、その後の動物の回復を難しくしている。
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今後の研究の推進方策 |
幸い、これまで研究の進展を妨げてきた上記3つの問題は、マーモセットの価格以外の問題は、凡そ解決できているので、今後の研究が大きく進展すると見込んでいる。特に麻酔が安定的にできるようになったことと、手術を2段階に分けることで、実験の成功率が特段に上がった。また、RH795による染色方法も確立できた。さらに、短時間で聴覚皮質のマッピングができるよう、音刺激を自動的に提示する方法も確立し、パラベルト領域同定のための複雑刺激音も準備完了した。フロロゴールドによる染色の問題は、サバイバル時間の延長で解決できると考えられる。これらの方法を駆使して、マーモセット聴覚皮質の領野同定と、各領野と内側膝状体との神経連絡を解明し、論文発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度の前半において、安定的に実験結果を得ることができなかった。マーモセットが非常に高価であるため、安定的に研究が行えるようにするための情報収集の間はマーモセットの実験を控えて、マウスで対照実験を行ったため、次年度に使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
マーモセット、神経トレーサ、電位感受性色素などの購入と論文発表に使用する計画である。
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