研究課題/領域番号 |
25290007
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
粂 和彦 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (30251218)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 睡眠 / 覚醒 / 概日周期 / ショウジョウバエ / ドーパミン |
研究概要 |
本研究では、ショウジョウバエの睡眠覚醒制御機構の中でも、特に、睡眠から覚醒に移行する機構に焦点をあてて解析して、その分子機構の解明を目指している。中でも、外来性の刺激による覚醒ではなく、内在性の機構による「自然覚醒」の機構についての理解を深めることを目的としている。 今年度は、まず、内在性の覚醒制御に深く関与する生理的な条件の中で、栄養(飢餓)状態と睡眠覚醒の関連を調べた。哺乳類と同様に、ショウジョウバエでも飢餓状態が覚醒度を高めることが示されている。そこで、この飢餓状態で、何が覚醒刺激になるのかを知るために、栄養に加えて甘みがあるショ糖、人口甘味料で栄養は無いが甘みの強いスクラロース、栄養価はあるが甘みは弱いソルビトールの、3種類の性質の異なる糖質を用いて解析した。これらの3種類の糖質を与えた条件を、飢餓条件と比較したところ、ショ糖とスクラロースでは、覚醒度が下がったのに対して、ソルビトールでは変化が弱かった。このことは、覚醒系には栄養状態ではなく、給餌時の味覚刺激の方が、より強い影響を与えることを示唆した。そこで、マイクロアレイによる発現解析などから、この現象を制御する神経回路と、分子機構を解析中である。 次に、吸入麻酔薬に対する反応を検討した。吸入麻酔薬は、低濃度では興奮状態を作り出し、高濃度では活動を抑制して、を抑制する。麻酔の作用機序には自然な睡眠覚醒と共通する機構と、異なる機構が想定されているが、私たちは、同じ遺伝子が、ショウジョウバエにおいて、睡眠と麻酔の両者を制御している可能性を見つけた。この遺伝子の発現を抑制したショウジョウバエでは、睡眠の量が減少する。そして、吸入麻酔薬に対しては、興奮相が消失して、より低濃度で麻酔状態になる。この現象は、覚醒度が高いと麻酔の効果が出にくいという従来、多数報告されてきた現象と反対の結果で興味深く、詳細な機構を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ショウジョウバエの睡眠覚醒制御機構について、これまで続けてきた研究を、飢餓条件や、吸入麻酔薬との関連などの、新しい生理条件との組み合わせで発展させており、初年度の研究計画としては、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の計画は順調に進んでいるので、現在の方向で進めていく。また、研究計画を作った際には、ショウジョウバエでは使用例がなかったが、遺伝子組み替えにCRISPRが使用可能になっていきており、これらの新規の技術も積極的に導入することで、より高い研究成果を目指す。
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