研究課題
本研究では、ショウジョウバエの睡眠覚醒制御機構の中でも、特に、睡眠から覚醒に移行する機構に焦点をあてて解析した。3年間の研究で、栄養状態と睡眠覚醒の制御機構で、以下の点を解明した。まず、低栄養状態(飢餓状態)では睡眠量が減少して、ショ糖投与で睡眠量が回復する。甘味のみで栄養価がない人工甘味料投与や甘味受容体GR64a発現細胞の活性化でも睡眠を誘導できること、甘味がないが栄養価がある糖分投与では睡眠が誘導できないことから、覚醒から睡眠への移行には甘味知覚が重要である。一方、空腹での睡眠時は覚醒閾値が下がるが、これは人工甘味料では改善せず、逆に甘味のない栄養素で改善することから、栄養状態は異なる知覚系により睡眠維持系に促進的に働く可能性が示された。また、アミノ酸の中でグリシンに加えてD-セリンが睡眠誘導的に働くことを見出したが、この作用がグリシン受容体を介さないことから、NMDA受容体を介することが示唆された。また、シナプス末端に発現する中性アミノ酸トランスポーター遺伝子が睡眠促進的に働くこと、この遺伝子がプロリンを基質とし、プロリン脱水素酵素の変異が睡眠を増やすことなどから、プロリンも睡眠制御に関与することを見出した。プロリンの作用もNMDA受容体を介することが示唆される。さらに、筑波大学の柳沢正史教授らとの共同研究で、マウスの睡眠制御遺伝子(Sleepy)のショウジョウバエホモログ(dSleepy1)の解析を行った結果、マウス同様にリン酸化部位の欠損変異の過剰発現が、睡眠を誘導することを見出した。この結果から、ショウジョウバエの睡眠が、哺乳類の睡眠のモデルになりうることを、改めて確認できた。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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PLoS Genetics
巻: 11 ページ: e1005209
10.1371/journal.pgen.1005209
PloS One
巻: 10 ページ: e0128101
http://dx.plos.org/10.1371/journal.pone.0128101