現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初目標として考えていた大脳皮質領野特異的に発現する遺伝子の制御機構については、上述のように、連合野特異的発現遺伝子群と視覚野特異的発現遺伝子群のメチル化レベルが前者では高く後者では低いことを見出し、更に、メチル化結合蛋白質MBD4が連合野特異的発現遺伝子(RBP4, PNMA5)を制御していることを報告した(Hateet al., J. Neurosci., 33, 19704-19714)。研究代表者等は、霊長類大脳皮質領野で発現に顕著な差のある遺伝子は、連合野特異的なもの(RBP4, PNMA5, SLIT1)と視覚野特異的なもの(FSTL1/OCC1, 5-HT1B, 5-HT2A)の2群に分かれることを明らかにしてきたが、平成25年度でこれらの発現が遺伝子レベルのメチル化の差とメチル基結合蛋白質の大脳皮質分布の差という2段階の機構で制御されていることを報告した(Hata et al. J. Neurosci, 2013)。この研究の中で、視覚野及び連合野特異的発現遺伝子群のメチル化の差異が発生のどの段階で生じるのかという新たなテーマが生じた。最終年度でこれを明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、これまでの研究で、霊長類の連合野に強く発現遺伝子として同定した分子のプロモーターのCpG領域は高度にメチル化しているのに対し、視覚野に強く発現する遺伝子として同定した分子のそれは殆どメチル化されていないことを明らかにしてきた。この成果を踏まえて、本年度は、胎生期、新生児、及び成体のマカクザル大脳皮質における領野差遺伝子プロモーターのメチル化及び大脳皮質におけるDNAメチル基転移酵素(DNMT1, DNMT3a, DNMA3b)の発現を調査し、この領野差遺伝子間のメチル化の差異は大脳皮質発生のどの時期に起こるのかを明らかにする。それと平行して、マカクザルES細胞を用い、未分化の状態から大脳皮質マーカーを発現するそれぞれの過程でDNAを抽出し、どの段階で領野差遺伝子のメチル化(または脱メチル化)の差異が生ずるかを調査する。
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