研究実績の概要 |
代表者の研究室では、霊長類(マカカザル)大脳皮質領野選択的に顕著に発現する遺伝子は、連合野特異的なものと視覚野特異的なものの2つの群に分けられることを見出した(Yamamori, T, 2011)。これら2群の中、連合野特異的に発現する遺伝子(PNMA5, RBP4, SLIT1)のプロモーター部のCpG領域は、高度にメチル化されている一方、視覚野特異的に発現する遺伝子(5HT1B, 5HT2A, OCC1/FSTL1)のプロモーター(CpG領域)のメチル化は低い事を報告した。更に、古典的なメチル結合領域を含むMBD結合タンパクファミーリーの中、MBD4が、in vitro 及び、in vivoで、PNMA5とRBP4の発現制御を制御していることを証明した(Hata et al., 2013) 。 当該年度は、これらのメチル化の変化が、マカカザルの大脳皮質発達のどの段階で起こるのかを調べた。マカカザルの大脳皮質発達で、最も劇的な変化があるのは、視床からの投射が始まる胎生(E)80日と外界からの入力が一気に増大する誕生時である。そこで、マカカE78と誕生時(P0)、及び、成熟ザルの前部(前頭葉)と後部(視覚野)組織を採取し、連合野特異的発現遺伝子(PNと視覚野特異的発現遺伝子遺伝子のプロモーター(CpG領域)メチル化レベルを調べた。その結果、前頭葉特異的遺伝子では、高メチル化がE78, P0, 成熟ザルで、前頭葉、視覚野いずれも高く、一方、視覚野特異的遺伝子では、低メチル化は、E78,P0,成熟サルを通して観察される。これらの結果は、メチル化は、少なくとも視床投射や外界入力以前に、前頭葉特異的遺伝子と視覚野特異的遺伝子の内在的プログラムとして決定されていることを示している。
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