研究課題
高等哺乳動物に特徴的な脳神経構築の、発生・発達過程における形成メカニズムの解明は、脳神経医学における重要研究課題のひとつである。本研究課題では、フェレットを用いて高等哺乳動物に特徴的な脳神経構築の形成メカニズムの解明を行う。従来、ヒトに近い高等哺乳動物の脳神経系の解析は注目されてきたが、遺伝子操作が困難であったことからその解析は遅れていた。最近我々は子宮内電気穿孔法を応用してフェレットの大脳皮質での遺伝子操作に成功した。そこで本研究では大脳皮質に焦点を絞り、その分化過程を解析している。これまでにフェレット大脳皮質においてFGFシグナルが多小脳回症の発症に重要であることを見いだし、その病態解析を行った。我々の方法を用いてフェレット大脳皮質へFGF8を発現させたところ、多小脳回症が再現できることを見いだした。切片を作成して解析したところ、Pax6陽性およびTbr2陽性神経前駆細胞が著しく増加していることを見いだした。それに一致して分裂している細胞数も増加していた。さらに大脳皮質の各層ごとの厚みを計測したところ、2/3層が優先的に増加しており、これらが多小脳回症の形成に重要であることが示唆された。多小脳回症モデルを用いて、今後には治療法の開発などが進展することが期待される。本研究の成果は、多小脳回症の病態解明に留まらず、高等哺乳動物における脳形成機構の解明という基礎神経科学などへの波及効果も大きい。
2: おおむね順調に進展している
予定通り順調に進んでいる
これまでにFGFシグナルを操作することにより、大脳皮質前駆細胞の増殖異常および脳回形成に異常が見られることが明らかとなった。今後はさらに遺伝子機能解析を進める予定である。
研究に用いるちょうど良い年齢の動物が入手できなかったために次年度に研究を繰り越した。
当初予定した研究を行う。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 20611
10.1038/srep20611
Nature Communications
巻: 6 ページ: 10232
10.1038/ncomms10232
Cell Reports
巻: 13 ページ: 1989-1999
10.1016/j.celrep.2015.10.050
巻: 5 ページ: 15370
10.1038/srep15370
eNeuro
巻: 2 ページ: e0019-15
10.1523/ENEURO.0019-15.2015
Cerebral Cortex
巻: 25 ページ: 3535-3546
10.1093/cercor/bhu197
http://square.umin.ac.jp/top/kawasaki-lab/