研究課題
高等哺乳動物に特徴的な脳神経構築の、発生・発達過程における形成メカニズムの解明は、脳神経医学における重要研究課題のひとつである。本研究課題では、フェレットを用いて高等哺乳動物に特徴的な脳神経構築の形成メカニズムの解明を行う。従来、ヒトに近い高等哺乳動物の脳神経系の解析は注目されてきたが、遺伝子操作が困難であったことからその解析は遅れていた。最近我々は子宮内電気穿孔法を応用してフェレットの大脳皮質での遺伝子操作に成功した。そこで本研究では大脳皮質の表面に存在する脳回(脳表面のシワ)に焦点を絞り、その分化過程を解析してきた。まず、将来に脳回として突出する部位にPax6陽性およびTbr2陽性前駆細胞が集積していることを見いだした。時期的には脳回形成が始める1週間以上も前から集積が見られていたことから、脳回形成の制御している可能性があると考えた。そこでフェレット大脳皮質への子宮内電気穿孔法を用いて優性不能型Tbr2を発現させTbr2の機能阻害を行ったところ、SVZに存在するTbr2陽性およびPax6陽性神経前駆細胞の数が減少させることができた。優性不能型Tbr2の発現により、早期に神経細胞が出現してきていたことから、前駆細胞の状態が維持できずに神経細胞への分化が早期に進んだと考えられる。さらに優性不能型Tbr2により脳回形成が阻害されたことから、将来の脳回部位に集積するTbr2陽性細胞が脳回形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。本研究の成果は、高等哺乳動物における脳形成機構の解明という基礎神経科学にとどまらず、高等哺乳動物特有の脳神経疾患の病態解明など臨床脳医学への波及効果も大きい。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Proceedings of the Japan Academy, Series B
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