研究課題
慢性疼痛、特に神経障害性疼痛モデルの脊髄グリア細胞、血管内皮及びニューロンにおいて、1)障害を受けた末梢神経の脊髄終末部の血管内皮における各種プロスタノイドの各合成酵素の発現動態を詳細に検討する。2)ATP受容体P2Y12,13受容体の細胞内シグナル伝達系の解明、特に低分子G蛋白であるRhoの活性化を中心にその活性化動態を検討する。以上の2点につき、実験を中心的に進め、以下の成果の発表や、途中経過の結果が得られている。1.昨年、GLIAに発表したCOX-1/PGD2系の合成酵素の脊髄ニューロンでの発現と神経障害性疼痛との関連に引き続き、COX-2とその下流の酵素発現と神経障害性疼痛の関連を精査している。その結果、ラットの末梢神経障害後に、脊髄内血管内皮においてCOX-2及びPGI2の合成酵素であるPGI2 synthaseの発現増加が観察された。また、PGI2の受容体が脊髄ニューロンにおいて発現していることを確認出来た。内皮細胞での発現増加を介在する分子として、脊髄マイクログリアで増加するTNFαが有力候補として見つかり、TNFα投与により末梢神経障害後で生じる種々の現象を再現することが出来た。現在、最終的な論文作成のための詰めの実験を施行中で、近々投稿予定である。2.末梢神経障害後のマイクログリアにおけるP2Y12/13の下流のシグナルについて精査した。特に細胞外ATPや末梢神経障害がP2Y12/13やROCK (Rho-associated coiled-coil-containing protein kinase)を介して、p38MAPKを活性化するか否かについて検討した。その結果、ROCK阻害剤はp38の活性化のみならず、2Me-SADP投与による痛覚過敏や脊髄マイクログリアの活性化を抑制することがわかった。興味深いことに、ROCK阻害剤は、末梢神経後のマイクログリアの増加を抑制することは出来なかった。以上の結果は他の結果と合わせて、外国一流雑誌であるGLIAに発表した。
2: おおむね順調に進展している
本プロジェクトにより、COX-1の発現及びPGD2の発現を脊髄マイクログリアで証明し、難治性疼痛のメカニズムに関与していることを、昨年国際一流紙のGLIAに発表することが出来た。また現在進行中のプロジェクトも、COX-2発現とPGI2合成酵素の発現を、脊髄血管内皮で証明することが出来ており、脊髄グリア細胞と血管内皮及び脊髄ニューロンの3者間の相互関係を示すデータが揃いつつある。最終の実験を施行中であって投稿直前まで進捗しており、今年度中に発表できるように最大限の努力をする予定である。以上の状況により、おおむね順調に進展していると判断できる。
最大の問題点は、現在投稿予定の成果の一部が、過去の他施設から発表されているデータと一致しない点である。特にその論文が世界的な超一流紙であるため、我々の成果を納得してもらうためには相当の苦労が予想される。繰り返し実験や複数の裏付け実験等を精密に繰り返して、論文を作成する予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
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