研究課題/領域番号 |
25290017
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
横尾 英明 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40282389)
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研究分担者 |
村上 孝 高崎健康福祉大学, 薬学部, 教授 (00326852)
佐々木 惇 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (80225862)
伊古田 勇人 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90420116)
信澤 純人 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80635318)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳腫瘍 / グリオーマ / 疾患モデル動物 / 腫瘍関連マクロファージ |
研究実績の概要 |
S100β-v-erB Tgラットの系統を維持しつつ、発生した脳腫瘍の検体ならびに遺伝子サンプルの蓄積を通して研究基盤の整備充実を進めた。現在まで26世代まで兄妹交配による継代をおこなっているが、表現型に変化は認められず、優れた系統の脳腫瘍モデル動物であることが示されている。p53ノックアウトラットラットと交配して誕生した雑種個体はverbB遺伝子と変異p53遺伝子をそれぞれヘテロ接合性にもつ(S100β-verbB+/- p53+/-)が、これら38個体の観察を終えた。その結果、脳腫瘍の発生は約20%の個体にとどまり、その他の個体は軟部肉腫、癌腫、造血器腫瘍などを発症し、平均寿命は54wと、S100β-verbB+/+およびS100β-verbB+/-の個体と比較して生存期間が有意に短縮した。しかし、p53+/-の個体と平均生存期間がほぼ同様で、この時期にv-erbB+/-の個体の脳腫瘍の発症例は少ないことから、v-erbBとp53は共働することなく、それぞれの遺伝子変異の別個の作用によって脳腫瘍ないし全身の腫瘍を形成していたと考えられた。50週齢に達したv-erbB+/+個体に培養ラットミクログリア細胞株の脳内接種と放射線照射を併用した実験では、生存期間が延びる傾向が示されており、個体数を増やして解析を続けている。ラット脳腫瘍の解析の手掛かりを得るためにヒト脳腫瘍についても病理学的ならびに分子遺伝学的解析をおこなった。主な成果として、Olig2発現は低異型度びまん性グリオーマの組織学的および分子遺伝学的分類に役立つことを明らかにした他、類上皮型膠芽腫の分子遺伝学的解析、乏突起膠腫におけるα-internexinとCIC発現に関する解析などをおこなった。また稀なヒト脳腫瘍症例の臨床病理学的検討をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p53遺伝子変異導入実験により、本モデルラットにおける脳腫瘍の形成にはp53の関与が薄いことが示された。このことはヒトの一次性膠芽腫の多くがEGFRの増幅ないし過剰発現を呈する一方で、そのほとんどはp53に変異が見られない事実に符号する。ミクログリアと放射線照射を組み合わせた実験では個体の生存期間が延長する傾向が得られており、この方面でのさらなる研究の展開が期待できる。今後はドラッグリポジショニングの手法を取り入れて治療効果の見込まれる候補薬物の試験を本モデルラットでおこなうことを視野に入れている。ヒト脳腫瘍に関する新知見を明らかにし、脳腫瘍モデル動物研究とのクロストークを図る上でも一定の成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
脳腫瘍(悪性膠腫)の治療実験のモデル動物としての有用性が示唆されており、今後はさらに個体を増やして進めていきたい。ヒト悪性膠腫においては薬物と放射線を組み合わせた治療が基本であるので、特に薬物について新たな治療実験モデルを構築したい。同時にヒト脳腫瘍の解析を通してラット脳腫瘍モデルの解析の手掛かりを得るよう努めたい。
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