研究課題/領域番号 |
25290018
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
森 啓 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10159189)
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研究分担者 |
富山 貴美 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (10305633)
梅田 知宙 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70549790)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳神経疾患 / 痴呆 / 老化 / アミロイド / オリゴマー |
研究概要 |
Abetaオリゴマー仮説は未だ検証が不十分である。この仮説を検証することを目的とした本研究では、私達が発見した大阪変異(Tomiyama et al, 2008)を発現するモデルマウス(ibid, 2010)で残されたタウ分子の関与する神経原線維変化解明に挑戦した。 まずヒトタウゲノム型遺伝子を発現するモデルマウスを作製した。その結果、タウ分子の最大の特徴である幼弱期から成獣への成長に伴って生理的スプライシング変化を再現するゲノム型モデルマウスを世界で初めて作製することに成功した。同時に、このマウス研究では、FTDP-17変異であるイントロン変異(C+16T)をもつものと野生(正常)型の2種類の系統を作製しており両者の比較をした結果、変異の無い野生型ヒトタウモデルでは、タウの生理的発現はあるが、病理学的、電気生理学的、行動学的な異常性は認められなかった。一方、イントロン変異を発現するタウモデルでは、これらすべてのタウ病変である生化学的不溶性、異常リン酸化、電気生理学的異常、行動異常が生じており、24ヶ月齢では神経原線維変化形成まで観察できた(Umeda et al (2013) Am J Pathol 183:211-225)。 つぎに、従来神経原線維変化が生じなかったAbetaオリゴマーマウスと、今回作製した野生(正常)型タウマウスは、いずれのモデルマウスも単独では神経原線維変化を形成することはできなかったが、両者の交配により得られたdouble Tgマウスでは、17~18ヶ月齢という予想を超える早期に神経原線維変化が形成されることを明らかにした。つまり、Abetaオリゴマーはタウ病変を誘導することを実証できたわけであり、今回作製したdouble Tgマウスを用いて、従来考えられてきた病態カスケードを初めて証明できたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデルマウスとして導入した遺伝子長がゲノムが故に困難を経験したが、試行錯誤の末に作製できたモデルは、思わぬ生理的モデルである成果を得ることができた点はプラス面である。交配実験の途中で、double Tgマウス飼育スペースの物理的制約があり、協調的に研究を進めることを優先したために、厳密な比較検証実験のために必要数の確保に時間がかかった点がマイナス面として考えている。
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今後の研究の推進方策 |
Abetaオリゴマー検証実験も並行して研究を推進させることで、全体としてAbetaオリゴマーの病態解明をさらに進めると共に、治療戦略の計算できる手段を探りたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度末近くになって予期せぬ事態(炭酸ガス培養装置の故障と遠心分離機の不調)が生じた。 継続性の高い培養器の更新は緊急的に手配したが、新年度は遠心分離機の復帰を図り、オリゴマーの生化学実験も推進する計画である。
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