研究課題/領域番号 |
25290019
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
橋本 款 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 研究室長 (50189502)
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研究分担者 |
小柳 清光 信州大学, 医学部, 教授 (00134958)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アディポネクチン / アルツハイマー病 / パーキンソン病 / 神経変性疾患 |
研究実績の概要 |
近年、糖尿病や肥満、動脈硬化などの生活習慣病が、アルツハイマー病(AD)やパーキンソン病(PD)などの神経変性疾患の危険因子となることが注目されているが、このことは、メタボリック症候群と神経変性疾患との間に介在する共通した病態のメカニズム(蛋白凝集、酸化ストレス、慢性炎症など)が重要であり、抗糖尿病にに基づいた治療戦略が有効であるという認識が確立されてきた。 我々は、メタボリック症候群で減少することが知られているアディポカインであり、実験レベルで抗糖尿病作用、抗炎症作用を持つことで知られるアディポネクチン(APN)が神経変性の抑制に重要であり、APNのloss of function が 神経変性の進行に関与しており、APNの作用を補うことが治療に通じるのではないかと考え、この仮説の証明を細胞、マウス、さらに患者由来のサンプル(血清、脳脊髄液)の異なるレベルの実験系で試みた。すなわち、PDやレビー小体型認知症などのシヌクレイノパチーのモデルであるαシヌクレイン(αS)発現神経芽細胞、トランスジェニック(tg)マウスにおいて、リコンビナントAPNの鼻腔投与が神経変性の抑制に有効であることを示し、さらに、臨床材料においては、AD患者の脳脊髄液において健常者のそれに比べて、APNが有意に減少していることを見出し、さらに、ADの剖検脳においては、神経原線維変化突起(タングル)において、APNとタウが共在していることを観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の成果に関して、論文発表した(Sekiyama et al. 2014 Anal Clinical Translational Neurology, Waragai et al 2016 J Alzheimers Disease)。また、マウスの知見については、米国に対する国際特許(作用特許)を取得した。 引き続き、異なるタイプの神経変性疾患のモデルマウスであるβシヌクレイン発現tgマウスを用いてAPNの抗神経変性作用の解析、ADその他のタウオパチーの組織学的検討を継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
最終的には、APNが神経変性疾患の治療薬になることを確立したいと考えているが、そのためには、APNの作用に対する理解をより一層深めておく必要があると思われる。特に、レビー小体やタングルへのAPNのsequestrationの観察は、αSやTAUの神経毒性の高いとされるプロトフィブリル、オリゴマーなどの伝搬を、APNがリガンドレベルで直接ブロックしている可能性を予感させるものであり、非常にポテンシャルの高い結果であると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ADやPDの剖検脳の組織学的解析において、レビー小体やタングルが抗APN抗体で濃染することを観察、すなわち、APNがレビー小体やタングルへsequesterされていることが推定されたが、このことは、αSやTAUの神経毒性の高いとされるプロトフィブリル、オリゴマーなどの伝搬を、APNがリガンドレベルで直接ブロックしている可能性を推定させるものであり、神経変性のメカニズムの解明や治療の開発において意義深いものであるとと考えられる。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の問題に対して以前より作成中であるシヌクレイノパチーのショウジョウバエモデルを用いて検討したいと考えている。ショウジョウバエは内因性のAPN、APNの受容体を持たないので、外因性のAPNのリガンドレベルの解析を行なうのに都合がよい。
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