研究実績の概要 |
脳神経回路網形成におけるNRXNsの役割を明らかにするために、小脳顆粒細胞(平行線維)特異的にNrxn1,2,3を欠損する遺伝子改変マウスの樹立と解析を行なった。小脳顆粒細胞選択的Nrxn1,2,3欠損マウスは重篤な運動失調を示し、ローターロッドテストを用いて運動協調を評価した結果、コントロール群に比べNrxn1,2,3欠損マウスは著しく運動協調が低下していることが明らかとなった。また、免疫組織学的解析から小脳顆粒細胞特異的Nrxn1,2,3欠損マウスは生後発達に伴い小脳顆粒細胞が欠落していき、11週令においては大多数の小脳顆粒細胞が消失していることが明らかとなった。これらの結果は、NRXNsが小脳神経回路網形成・維持に必須の分子であることを示しており、脳におけるNRXNsの役割を解明する上で重要な知見となると考えられる。さらに、GluRδ2-Cbln1-NRXN三者複合体の受容体下流シグナルをスクリーニングし、GST pull-downアッセイにより複数の下流シグナル候補分子を得ることができた。今後、候補分子のノックダウンまたは結合阻害実験等で結合の生理的意味を解析していくことでシナプス形成、機能制御のメカニズムの全貌が明らかになっていくものと考えている。
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