研究課題/領域番号 |
25290021
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
植村 健 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (00372368)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 脳・神経 / 小脳 / 神経回路網形成 |
研究実績の概要 |
本年度は、小脳顆粒細胞特異的Nrxn1,2,3欠損マウスの解析を中心に研究を進めた。下オリーブ核(登上線維)特異的遺伝子欠損マウスについては、遺伝子欠損の効率が著しく低いことが明らかとなり、これらについては下オリーブ核にウイルスをもちいてCreを発現させることを検討した。小脳顆粒細胞特異的Nrxn1,2,3欠損マウスの運動協調をローターロッドを用いて解析を行い、この遺伝子改変マウスが重篤な運動失調を示すことが明らかとなった。小脳顆粒細胞特異的Nrxn1,2,3欠損マウスの小脳の解剖学的解析を行なった。遺伝子改変マウスの小脳は野生型のマウス小脳に比べて極端に小さくなっていることが観察された。さらに、神経細胞特異的なNeuN抗体およびDAPI染色での解析から、8週令の遺伝子改変マウスにおいては小脳顆粒細胞がほぼ消失していることが明らかとなった。3-4週令の遺伝子改変マウスの小脳をTUNEL染色法を用いて解析したところ、小脳顆粒細胞はアポトーシスによる細胞死により消失していくことが示唆された。さらに、電子顕微鏡を用いた解析を行い、遺伝子改変マウスにおいては平行線維-プルキンエ間シナプスがほぼ消失していることが明らかとなった。この結果は、光学顕微鏡で観察された小脳顆粒細胞の消失によるものと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解析に用いる遺伝子改変マウスが重篤な運動失調を示し、予定していた解析の週令に達する前に死亡してしまうことが頻発し、解析が当初の予定よりやや遅れていたが、給水瓶の位置を下方に設置させ、エサを床に直接置くことで解析に必要な遺伝子改変マウスの個体数を得られるようになっている。その他についてはおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予想に反し、小脳顆粒細胞においてシナプス間細胞接着分子NRXNsを欠損させると、神経細胞死が引き起こされることが明らかとなった。今後、NRXNs欠損によって引き起こされる神経細胞死のメカニズムを培養小脳顆粒細胞を作製して解析していく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題では、シナプス間細胞接着分子を小脳顆粒細胞特異的に欠損させ、小脳神経回路網形成に及びす影響を解析してきた。しかしながら、当初の予想に反して、小脳平行線維ープルキンエ細胞間のシナプス形成・維持を担うシナプス間細胞接着分子を小脳顆粒細胞で欠損させると、小脳顆粒細胞の細胞死が引き起こされることが明らかとなり、解析に想定以上の時間を要している。次に行なう解剖学的実験、培養実験の物品費、動物飼育費、旅費、論文掲載費が執行できていないため、本研究課題を完遂させるために補助事業期間延長を申請した。
|
次年度使用額の使用計画 |
シナプス間細胞接着分子を小脳顆粒細胞特異的に欠損させた際に生じる神経細胞死の原因を培養小脳顆粒細胞を用いて詳細に解析していく予定である。遺伝子改変マウスはCreリコンビナーゼ依存的に遺伝子欠損が生じるマウス系統である。この遺伝子改変マウスの小脳から培養小脳顆粒細胞を作製し、レンチウイルスを用いてCreリコンビナーゼを発現させ、神経細胞死がin vitro培養神経細胞で再現するかを確認する予定である。さらに細胞死が生じる過程をタイムラプスイメージングにより観察し、その原因を明らかにしていく予定である。解析に必要各種消耗品、動物飼育費として4,224,807円、共同研究の打ち合わせ、学会旅費として300,000円, 論文掲載費として300,000円計上している。
|