研究実績の概要 |
1、我々はDPSI法と名付けた方法により細胞外セリンプロテアーゼ Neuropsinの海馬における基質として神経栄養因子 Neuregulin-1の同定に成功した。この方法を応用するために組織プラスミノーゲンアクティベータのLoopG(C506S)を変異させたExpression vectorを作成し、これをCOS細胞に組み込んだ。同様の方法にてtPAC506Sを作成し、これは実際に市販されているリコンビナントplasminogenと結合することを示した。このことは従来いわれてきたものの確認されていなかった現象、すなわちtPAがplasminogenを直接結合して、切断することを直接に示したものである。このことを踏まえ、今後、変異tPAに結合するたんぱく質を海馬ホモジェネートから同定する。
2、これまで田村ら(J. Neurosci. 32, 12657, 2012)が同定した変異ニューロプシン結合物の解析をさらに進めるため、NRG1に絞り、海馬および前頭皮質のNRG1の分布を検証した。 NRG1はプロセシングを受けて抑制性ニューロンを亢進させるため、シナプトソーム分画など細胞分画を行いウエスタンブロットにより検証したところ濃い63Kd(mature NRG1)バンドおよび,40,34および30kDaの薄い3つのバンドを得た。カイニン酸を腹腔内に注射し大脳皮質、海馬でのArcの増加によって神経活動の亢進を確認したサンプルにおいて、上記シナプトゾームに濃縮するバンドの増強を認め、特に田村が見出した34Kdの著しい濃縮を観察した。これはニューロプシンによる切断前の断片と考えられ神経活動の亢進によって前シナプスマトリクスに集積しているものと考えられた。
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