Cdk5は神経細胞特異的なメンブレン結合性キナーゼである。本研究ではCdk5によるメンブレン輸送制御に関して、LMTK1(脳の新規Ser/Thrキナーゼ)とCIN85/CD2AP(Dab1のCdk5リン酸化部位に結合するアダプタータンパクでアルツハイマー病リスクファクター)を中心に研究を進めてきた。平成27年度はLMTK1についてと、新たにGRABというRab8のGEFについての著しい成果が得られたので、それらを中心にして報告する。 LMTK1については子宮内穿孔法によるマウス胎児での遺伝子ノックダウンや変異LMTK1発現による神経細胞移動における役割を調べた。ノックダウンしても大きな影響は得られなかったが、不活性型のLMTK1により神経細胞の移動が阻害された。Cdk5でリン酸化される部位の変異体によっても影響が見られ、神経細胞の移動にLMTK1が関与することが判明した。また、細胞骨格構造への影響についても調べた。特にLMTK1 活性に依存して、微小管の分布に大きな変化がみられた。不活性型LMTK1は微小管を細胞周囲に偏在させた。この影響はLMTK1が微小管形成中心の位置を変化させているためであると考えられた。一方、Cdk5 による軸索伸長制御については、これまではLMTK1を介してのみであったが、Cdk5の新たな基質としてGRABが見つかった。GRABはCdk5によるリン酸化でRab8を活性化するGEF活性が阻害された。不活性型のGRABはRab11の結合したエンドソームにより軸索内を輸送され、軸索末端で脱リン酸化されRab8を活性化し、軸索伸長に必要なメンブレンの供給することが示された.
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