蛋白質、核酸、脂質は生体を構成する重要な分子である。その合成、分解を始めとする代謝制御を正しく行うことは生命機能の維持に必須である。しかし、脂質については、その制御の詳細は蛋白質や核酸ほどには把握されていない。他方、生活習慣は生体の恒常性に重要であり、健康増進を考える上で不可欠な要因となっている。特に食習慣は生活習慣の中心に位置しており、栄養学的観点からも生体機能、脳機能と密接に関係している。今回、母体の食習慣が仔の脳機能発達に及ぼす影響をマウスで解析した。これまでの我々の研究では、雌マウスを妊娠前から離乳時まで高脂肪食負荷した場合、その産仔でスパイン形態の成熟が遅延することを見いだしている。今回の研究では、妊娠前~離乳までの間のどの期間が重要であるかを解析した。その結果、授乳期のみの高脂肪食負荷だけでも、産仔のスパイン形態の成熟が遅延することを見いだした。さらに、授乳期の雌マウスにビタミンCを与えると当該のシナプスの変化が抑制されることを見いだした。以上の結果は、授乳期の母体マウスの食習慣の重要性を示唆するもので、その作用メカニズムに何らかの酸化ストレスが加わっていることが考えられる。
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