研究実績の概要 |
糖尿病ラットの病態進行に合わせ、誘導後5日後、2週間後、2ヶ月後、6ヶ月後の4時点において海馬および嗅球の成体神経幹細胞を樹立した。樹立したin vitro幹細胞培養系で、①Wnt3/Wnt3a、②Fzd/LRP→Sox/LEF、③IGFBP4・IGF-1/IGF-2の各ファクターについて詳細な機能解析を行い、分子機序と各因子の相関の階層性について調べた。糖尿病時に機能低下した神経幹細胞の活性化について個体の認知機能、分子機序と糖尿病との関連性、その機能改善について解析を行った。 インスリン発現を促進するWnt3/Wnt3aの細胞内シグナル活性化機構を、健常体由来のHPCおよびOB NSCsと糖尿病進行状態の4時点のHPCおよびOB NSCsとで比較解析した結果、Wnt受容体のうち、LRP6,11の糖尿病下での発現変化に顕著な変化が確認できた。さらに、Wnt-受容体結合後の細胞内シグナルトランスダクションにおいて、β-cateninが核内移行したのちに結合するSox/LEF制御配列クロマチン修飾状態を比較解析し、標的遺伝子としてインスリン発現を活性化する転写因子であるNeuroD1のプロモーター領域のSox/LEF制御配列について、糖尿病進行過程)に依存した修飾変化が見られることがわかった。さらに、海馬の認知・学習機能については行動解析(ソーシャルレコグニション、新奇物体認知試験(OLT、ORT))により評価し、個体の認知機能と分子機序との関連性について総合評価を行った。
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