研究課題
基盤研究(B)
1) 脳神経系特異的ヘテロクロマチンプロテイン(HP)1欠損マウスの解析エピジェネティックな抑制マークと言われているメチル化H3K9を特異的に認識するHP1の脳神経系における機能を明らかにするために研究を進めた。HP1-floxマウスとNestin-Creマウスを交配して,C57BL/6背景の脳神経系特異的HP1欠損マウスを作製した。HP1欠損マウスは出生直後に致死であったが,このマウスは正常に出生して成長した。外見上特に異常は見られなかったので,テストバッテリー方式の行動解析を実施した。オープンフィールド等の新規環境での活動性が低下しており,行動異常が観察された。脳神経系特異的HP1欠損マウスとコントロールマウスの脳の各領域における遺伝子発現の違いを定量RT-PCR法により解析した。神経系細胞マーカーの発現に有意な違いはなかったが,一部の神経伝達物質の受容体遺伝子の発現に違いが見られた。2) 脳神経系特異的ヒストン脱メチル化酵素(KDM)欠損マウスの作製ヒストン脱メチル化酵素(KDM)の脳神経系における機能を明らかにするために研究を進めた。KDM-floxマウスとNestin-CreERT2マウスを交配して,タモキシフェン投与によって脳神経系特異的にKDMを欠損するマウス(C57BL/6背景)を作製した。このKDMは出生前後にもっとも強く発現するので,出生直前のE18.5の時に母親の腹腔内にタモキシフェンを投与することで,レポーターマウスのRosaLacZの発現を指標に,脳の広い範囲でCreが発現することを確認した。この条件を用いて脳神経系特異的KDM欠損マウスを作製して研究を進める。
2: おおむね順調に進展している
脳神経系特異的HP1欠損マウスについては,行動解析と遺伝子発現解析から興味深い結果が得られ順調に研究が進んでいる。脳神経系特異的KDM欠損マウスはタモキシフェンの投与条件が決まったので26年度から解析を開始する。
脳神経系特異的HP1欠損マウスについては,行動解析と遺伝子発現の結果を合わせて判断し,このマウスに生じている神経系の異常について,組織学的,行動薬理的な解析を行っていく。脳神経系特異的KDM欠損マウスは,E18.5の時に母親の腹腔内にタモキシフェンを投与して作製した脳神経系特異的KDM欠損マウスを用いて,テストバッテリー方式の行動解析を実施する。
脳神経系特異的KDM欠損マウスについてはタモキシフェンの投与条件の決定に時間がかかり,本格的な実験ができなかったために物品費の支出が少なくなった。また,学会発表ができるまでのデータが揃わなかったので,このテーマでの学会発表が少なく旅費の支出が少なくなった。脳神経系特異的KDM欠損マウスについても条件が決まったので本格的な実験を開始するので,試薬やマウスの物品費が必要である。また,25年度の人件費は半年分であったが,26年度は通年の人件費が必要なので,2倍程度に増加する。学会発表は海外も含めて積極的に行う予定である。
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Frontiers in Behavioral Neuroscience
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Nature Communications
巻: 4 ページ: 1346
10.1038/ncomms2336
Development
巻: 140 ページ: 2892-2903
10.1242/dev.093229
http://asrc.w3.kanazawa-u.ac.jp/