研究課題/領域番号 |
25290031
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
浅野 雅秀 京都大学, 医学研究科, 教授 (50251450)
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研究分担者 |
成瀬 智恵 京都大学, 医学研究科, 助教 (30372486)
吉原 亨 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (00401935)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳・神経 / 脳神経疾患 / 行動学 / 遺伝子改変マウス / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
1)脳神経系特異的ヘテロクロマチンプロテイン(HP)1欠損マウスの解析 エピジェネティックな抑制マークと言われているメチル化H3K9を特異的に認識するHP1の脳神経系における機能を明らかにするために研究を進めた。Nestin-Creマウスとの交配により脳神経系特異的HP1欠損マウスを作製して,テストバッテリー方式の行動実験に供したところ,オープンフィールドテストや明暗往来テスト,モリス型水迷路などで顕著な低活動性が観察された。不安亢進やうつ状態が疑われたので,抗うつ薬のフルオキセチンの慢性投与及び抗不安薬のジアゼパムの単回投与を行い,オープンフィールドテストでの活動性を測定した。しかしながら,これらの薬剤は低活動を回復させることはできなかった。行動薬理学実験の次のステップとして,セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)や覚せい剤のメタンフェタミンの効果を検討する予定である。一方,脳神経系特異的HP1欠損マウスとコントロールマウスの脳の各領域における遺伝子発現の違いを定量RT-PCR法により解析した。神経系細胞マーカーの発現に有意な違いはなかったが,セロトニン関連遺伝子の発現が一部の脳領域で有意に亢進していた。 2)脳神経系特異的ヒストン脱メチル化酵素(KDM)欠損マウスの作製 ヒストン脱メチル化酵素(KDM)の脳神経系における機能を明らかにするために研究を進めた。KDM-floxマウスとNestin-CreERT2マウスを交配して,タモキシフェン投与によって脳神経系特異的にKDMを欠損するマウスを作製した。このKDMは出生前後にもっとも強く発現するので,出生直前のE18.5に母親の腹腔内にタモキシフェンを投与して,脳神経系特異的KDM欠損マウスの作製を試みたが,脳の各領域におけるKDMの発現を抑制することがほとんどできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年12月に研究室を金沢大学から京都大学に引っ越したので,マウスのコロニーを一旦縮小する必要があり,実験が停滞してしまった。京都大学でのマウスコロニーも増えてきており,研究分担者2名も京都大学に移ってきたので,最終年度は目標達成に向けて研究を推進して行く。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるので,脳神経系特異的HP1欠損マウスに集中して研究を進めたいと考えている。セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)や覚せい剤を用いた行動薬理学的実験を進めて,行動異常の分子基盤を明らかにする。また,遺伝子発現に差が見られたセロトニン系を中心に,受容体分子の発現や脳内セロトニン濃度を解析して,HP1の標的遺伝子の同定を進める。標的遺伝子の候補についてはH3K9のメチル化などヒストン修飾の変化を解析して,HP1の直接的な関与を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年12月に研究室を金沢大学から京都大学に引っ越したので,実験が停滞してしまった。特にマウスのコロニーを一旦縮小する必要があったので,しばらくマウスを使った実験が行えず,物品費の支出が少なくなった。また,研究室の場所が変わったので,謝金で雇用していた人を雇用できなくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
京都大学でのマウスコロニーも増えてきており,研究分担者2名も京都大学に移ってきたので,27年度は実験を再開して,試薬などの物品費として使用する。また,京都大学の研究室には高性能の蛍光顕微鏡がないので,購入を予定している。
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