研究課題/領域番号 |
25290035
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
大塚 正人 東海大学, 医学部, 准教授 (90372945)
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研究分担者 |
持田 慶司 独立行政法人理化学研究所, 遺伝工学基盤技術室, 研究員 (60312287)
設楽 浩志 公益財団法人東京都医学総合研究所, 基盤技術研究センター, 研究員 (90321885)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | トランスジェニック / Cre-loxP / PhiC31 / PITT法 / 組織特異的プロモーター / Rosa26 |
研究実績の概要 |
マウス受精卵への顕微注入法を介して、予め指定された遺伝子座位にDNAコンストラクトを挿入させるPITT法をより洗練されたものとするために、当該年度は、1)複数ラインのTgマウスを同時作製法への発展、2)他機関におけるPITT法の実施、3)組織特異的発現への応用、を行い詳細な解析を可能とするTgマウスをハイスループットに作製可能な、次世代型の手法として有用性、汎用性を高めるための研究を進めた。 1については、種マウス由来の受精卵に2~3種類のドナーベクターを混合してインジェクション(Cre-loxP系とPhiC31系を併用)することで、異なるターゲットTgマウスを同時に作製することが可能であるかについて検討した。その結果、3種類の遺伝子のTgマウスを1回の顕微注入実験で作製することが可能であることが示された。このことから、複数のTgマウスを1日のインジェクションで作製する手法が現実的であることが示され、Tgマウス作製に要する時間と労力の大幅な削減に繋がるものと期待された。 2については、共同研究を行う他施設(理研BRC)でのPITT法を実行することで再現性の検討を行った。その際に、種マウスの精巣上体の輸送から得たIVF卵で顕微注入を実施することで、種マウス個体を維持することなく迅速にPITT法を行うシステムを確立することを目指した。その結果、理研BRCの技術職員による顕微注入胚由来の13.5日胚について、9.1%の個体が目的のTgマウスであることが分かり、本手法が問題なく実施可能であることが示唆された。 3については、組織特異的プロモーターであるThy-1プロモーターを使用したPITTマウスにおける、遺伝子発現の再現性について確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の注目すべき成果の一つは、世界標準系統であるC57BL/6N系統の種マウスを用いたi-PITT法を、複数のTgマウスの同時作製に応用したことである。これにより、Tgマウス作製に要する時間や労力を軽減できるだけでなく、使用するマウス数の削減にも繋がることから動物愛護の点でも貢献できるものと期待される。種マウスは、理研BRCに寄託するとともに、国内外の複数の研究施設からのリクエストを受け、譲渡した。これにより、i-PITT法の新たな利用価値を見出せたのみならず、本研究計画において最も重要な課題の一つ(基盤整備)がおおむね完了したと言える。一方で、inducibleトランスジェニックマウス作製への応用が少しだけ遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
最も重要な課題はほぼ完了していることから、残るいくつかの課題(inducible系への応用、Hprt遺伝子座位への応用、他施設におけるPITT法の実施)を完成させることに務める。 inducible発現系に関しては、ドキシサイクリン(Dox)誘導型発現を可能とするTgマウスを作製し、個体レベルでの遺伝子発現誘導系の確立と検証を行う。 Hprt遺伝子座位への応用については、種マウス用コンストラクト(変異loxP配列やattP配列等のタグを有するもの)をX染色体上のHprt遺伝子座位上流にノックインする。そのために、CRISPR/Cas9系を利用する予定である。これが可能となればあらゆる遺伝子座位をターゲットとすることができるなど応用性が非常に高い。Hprt座位へタグが挿入されたマウスの作製と検証を行う。 他施設におけるPITT法の実施については、研究分担者の所属施設でPITT法を進めることを計画している。 また、論文や学会発表等でPITT法を積極的に公開していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究を遂行するにあたり、実験補助員の雇用が必要となる。当該年度は、本助成金を用いて実験補助員の雇用をしたものの、雇用に要する費用の一部は他の研究費から捻出することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は最終年度として、本研究計画で作製した多くのTgマウスの解析を予定しており、その飼育維持費用等に使用する予定である。また、解析に要する人件費としても使用する予定である。本研究で得られた成果を複数の論文として公表する予定であり、オープンアクセス誌への投稿を目指していることからコストも高めであり、その出版費用に使用する。
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