研究課題
臓器欠損モデルの作成腎臓発生過程に関与するSall1遺伝子のターゲティングベクターをラットES細胞に導入し、組換え体ES細胞を2株得た。胚盤胞期の受精卵を採取し、組換え体ES細胞を顕微注入し、偽妊娠雌の子宮角に移植することによりキメララットを作製した。また、新規ゲノム編集法として注目されるCRISPR/Cas法を用いて、Sall1遺伝子ヘテロノックアウトラットを得た。胸腺の発生・形成およびT細胞欠損に関与するFoxN1遺伝子ヘテロ変異ラットからホモ変異ラットの作成を行った。ホモ変異ラットの末梢血解析を行ったところ、T細胞が著しく減少していることが分かった。ホモ変異ラットは胸腺欠損であることも確認できた。ホモ変異ラットの被毛に関して、FoxN1遺伝子の塩基欠損パターンによって違う傾向を見出した。単為発生胚に由来するラットES細胞株の樹立単為発生胚から多分化能や生殖寄与能を有している胚性幹細胞 (pESCs) が樹立できるという結果は、マウスでのみ報告されている。本実験では単為発生させたラット胚盤胞からpESCs株を樹立しようと試みた。Oct4、Nanog、Fgf4、Rex1の各未分化マーカー遺伝子は、調べた3ラインのpESCsにおいて受精卵由来ラットES細胞と同程度に発現していた。高メチル化状態を維持しているはずの雌性インプリント遺伝子が低メチル化状態を呈していたことも、受精卵由来ラットES細胞と同様の現象であった。pESCs注入胚盤胞から37匹のキメラ産仔(14匹が雌)が得られた。pESCsの各ラインから3匹ずつ計9匹の雌キメラ個体についてG1産仔を作出したところ、1キメラ個体に由来する23匹のG1産仔中の3匹がVenus陽性であった。以上、未分化能を維持し、多分化能や生殖寄与能も備えた単為発生胚由来のES細胞株を樹立することに、ラットで初めて成功した。
2: おおむね順調に進展している
FoxN1遺伝子ホモ変異ラットおよびSall1遺伝子ヘテロ変異ラットの作出に成功し、これら変異ラットを用いて胚盤胞補完法を利用した臓器欠損モデルにおける臓器再生・補完実験に移行できる。加えて、FoxN1ホモ変異ラットを作出し、胸腺欠損およびT細胞欠如という表現型と被毛に関する興味深い結果を得ることができた。このように腎臓および胸腺欠損モデルラットを量産できる状況にあり、来年度、腎臓および胸腺の臓器再生・補完実験を行う予定である。
腎臓形成に関わるSall1遺伝子および胸腺の発生に関わるFoxN1遺伝子ノックアウトラット由来の胚盤胞期胚を用いた胚盤胞補完法でES・iPS細胞由来の臓器再生を目指す。また、生殖細胞の発生・形成に関与するPrdm14遺伝子欠損モデルを作製し、ES細胞の胚盤胞補完を適用することで100%ES細胞由来の生殖細胞を有する個体が作製できるかを調べる。
次年度使用額が生じたが、これらについては3月末の支払い日までに支払処理が完了していないものであり、年度内に納品はすべて完了している(2月9日~3月31日納品)。
受託飼育については使用は26年度末で全て完了しており、支払処理のみが残っている状態である。消耗品も概ね同様であるが、3月末納品の一部のものについては引き続き27年度の当該研究に使用する。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
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http://www.nips.ac.jp/mamtg/