研究課題
胚盤胞補完法を利用した臓器欠損モデルにおける臓器再生とその応用再生医療分野では、異種動物体内でiPS細胞由来臓器を再生する技術が注目されている。具体的には、臓器形成に関わる遺伝子をノックアウト (KO) することにより発生過程のニッチ (臓器の空き) を作り、胚盤胞期胚に顕微注入したES/iPS細胞がそのニッチに寄与することで臓器が再生されるという原理で、これを胚盤胞補完法という。本年度は、胸腺発生遺伝子のひとつであるFoxn1をCRISPR/Cas9法によりKOしたラットにおいて、44塩基 (bp) 欠失、60bp欠失、および44bp/60bp欠失のホモ個体を作出した。致死のタイミング、無毛の程度、胸腺の有無、および末梢血T細胞の割合を調べた結果、44 bp /44 bp、60 bp /60 bp、あるいは44 bp /60 bpのいずれかのホモ欠失個体は胸腺が欠損していた。しかし完全な無毛ではなく、それらの分娩能力や哺育能力は正常だった。ホモ欠失個体の末梢リンパからはT細胞が著しく減少していた一方、B細胞やNK細胞の量は野生型ラットと同程度だった。また、60 bp /60 bp欠失個体は生後間もなく死亡することが明らかになった。次に、マウスES細胞を用いた胚盤胞補完によって胸腺欠損ラット体内にマウス胸腺を再生させようとした。ホモKOラット由来胚盤胞の胞胚腔に全身性にGFPを発現するマウスES細胞を顕微注入したところ、得られた産仔はホモKOラットであるにもかかわらず強いGFP陽性を示す胸腺が存在し、末梢血の解析によりCD3陽性の細胞集団が認められた。つまり、ラット体内で再生された胸腺が機能し、ラットT細胞の分化を誘導したと考えられる。以上、胸腺欠損ラット体内でマウスES細胞に由来する胸腺を再生することに成功し、再生胸腺が正常に機能し得ることが示唆された。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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