研究課題
加齢に伴うエンドサイトーシス障害が、アルツハイマー病の原因蛋白質と考えられているアミロイドβ(Aβ)の蓄積のみならず、シナプス障害などの神経伝達機能障害の要因となることから、エンドサイトーシス障害が引き起こす神経細胞の機能低下を忠実に再現できる新たなアルツハイマー病モデルマウスの開発を目的とする。Tet-onシステムによりテトラサイクリン刺激応答性に軸索輸送モーター蛋白であるdynein特異的shRNAを発現する遺伝子コンストラクトについて、25年度に作成したコンストラクトは細胞実験においてテトラサイクリン非存在下においても若干の目的因子発現が確認された。そこで26年度は、テトラサイクリン非存在下でのshRNAの発現が厳密に抑制される系とするためにテトラサイクリン調節性転写サイレンサー(tTS)を共発現する遺伝子コンストラクト(tTS-tetO-hU6-dynein shRNA)を作成し、マウス受精卵に顕微注入しトランスジェニックマウスを作出し、ファウンダーマウスが4匹得られ交配により次世代への遺伝子伝達を確認し4ラインを系統化した。本マウスと、すでに導入した神経細胞特異的CaMKIIαプロモーター制御下にrtTAを発現するマウス(CaMK2a-rtTA Tgマウス)との交配により、目的のダブルトランスジェニックマウスの作成を開始した。作出したダブルトランスジェニックマウスに、ドキシサイクリンを継続投与することで、神経細胞特異的にdyneinの発現が抑制され、エンドサイトーシス障害による神経伝達機能低下が引きおこされ、認知機能低下を示す新規のアルツハイマー病モデルマウスとなることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
トランスジーン・コンストラクトの改良を行い、shRNAの発現が厳密に制御される系を構築し、新規トランスジェニックマウスを複数系統作成し、目的とするダブルトランスジェニックマウスの作成を開始することが出来、ほぼ当初の計画通りに達成できている。
目的のダブルトランスジェニックマウスを複数系統、樹立し、皮膚組織や胎仔を用いて線維芽細胞の初代培養を行い遺伝子発現、蛋白発現などを確認し、最適なマウス系統を選抜する。作出した新規アルツハイマー病モデルマウスにドキシサイクリンを継続投与し、Y迷路試験や水迷路試験等の行動学的検索法を用いて認知機能を評価するとともに、脳組織の生化学的病理学的検索を行い、神経細胞の変性やエンドサイトーシス障害の有無、Aβの蓄積量等を検索して、アルツハイマー病の加齢性病態が再現されていることを詳細に解析する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件)
PLoS ONE
巻: 10 ページ: -
10.1371/journal.pone.0117362
FEBS Lett
巻: 589 ページ: 84-88
10.1016/j.febslet.2014.11.027.