研究概要 |
低分子量GTP結合蛋白質Ralが種々のがんの浸潤・転移に重要な働きをしている報告が相次いでいる。Ralの抑制性制御因子RalGAPは我々が世界に先駆けて同定し(J Biol Chem, 2009)、さらにRalGAPの発現低下が膀胱癌の浸潤・転移に密接に関わっていることを最近報告した(Oncogene, 2012)。本研究ではこれまでのRalおよびRalGAPに関する研究を発展させ浸潤性膀胱癌はじめ種々のがんにおけるRalGAPの発現低下の分子機構を明らかにする。またRalおよびRalGAPが制御する癌の浸潤・転移のメカニズムを明らかにする。さらに抗アポトーシスに重要なRalBに対して、RalAは形質転換に重要である。我々はRalA特異的に結合するキナーゼを見いだしており、それを同定する。このように本研究ではRalにフォーカスして研究を進め、がんの理解を深め、がん化・がん悪性化の診断・治療に貢献することを目的としている。 本年度はまずRalGAP発現状況を数種類の膀胱癌細胞株および前立腺癌細胞株にて評価し、RalGAP遺伝子のメチル化およびアセチル化の遺伝子発現における役割を解析した。現在、論文発表に向けさらに解析を進めている。RalAに結合するキナーゼを精製し、同定した。現在、そのキナーゼについて生化学的・細胞生物学的に解析を進めている。さらに、RalGAP遺伝子KOマウスではRalの活性化が亢進するが、そのマウスに炎症性腸炎や炎症性大腸癌を誘導し、Ralの炎症や癌の発症・進展への役割を解析している。
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