研究課題
基盤研究(B)
G 蛋白質共役型受容体(G-protein coupled receptor: GPCR)の一種Lgr5(Leucine-rich repeatcontaining G protein-coupled receptor 5)は、腸管上皮を含むいくつかの組織の幹細胞マーカーとして注目されているが、癌発症における具体的な役割は明らかになっていない。申請者らはLgr5 が大腸癌細胞株の造腫瘍性に必須の役割を果たしていることを見出し、転写因子GATA6 がLgr5 の発現を直接促進していることを明らかにしてきた。また、microRNAの1種であるmiR-363がGATA6/Lgr5の上流因子として機能していることを示唆する結果が得られていた。そこで本研究では、miR-363からLgr5へ至る経路の存在と造腫瘍性における重要性を検討し、以下のことを明らかにした。すなわち、1)レンチウイルスを用いてmiR-363 を過剰発現すると大腸癌細胞株DLD-1 のヌードマウスにおける造腫瘍性が低減すること、2)miR-363 の過剰発現によって低下したDLD-1 の造腫瘍性はGATA6やLgr5を過剰発現することによって回復すること、3)GATA6の発現抑制によって低下したDLD-1 の造腫瘍性はLgr5の過剰発現によって回復すること、等を突き止めました。これらの結果から、miR-363/GATA6/Lgr5経路は大腸癌細胞の造腫瘍性に深く関わっていることが明らかになった。これまでに得られている知見と考え合わせると、本経路は癌治療薬の有望なターゲットに成り得ると期待できた。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、miR-363からLgr5へ至る経路の存在と造腫瘍性における重要性を明らかにすることができた。本研究成果は開始当初からの到達目標の一つであり、研究は概ね順調に進展していると考えられる。
前年度までの研究を継続し発展させる。
25年度の研究を継続及び進展させるとともに、研究計画内の「新規Lgr5リガンドの探索および機能解析」と「癌幹細胞におけるLgr5の役割の解析」に注力して研究を円滑に進めるため、基金形式である本研究費の特性を活用し、次年度への繰越を実施した。実験用マウスを中心に試薬等の消耗品に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
Nat. Commun.
巻: 5 ページ: オンラインのみ
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