研究課題
基盤研究(B)
[目的、背景]我々はDNA障害応答とEGF等のシグナル伝達経路がクロストークしている可能性を提唱しており、これを検証する。本研究ではDNA障害時にChk1を介してMig-6のリン酸化が起き、それによるEGFシグナル伝達が亢進し、再増殖開始に機能しているかの検証を行う。さらにDNA障害チェックポイントと多様なシグナル伝達経路に関し、これらの経路の構成分子やモジュレーター分子のリン酸化修飾やユビキチン化を中心にクロストークの分子機構の解析を行なう。この経路の異常はDNA障害の増幅、染色体不安定化等を促進する可能性があり、新たな細胞がん化機構にもつながると考えている。[研究結果]DNA障害によってChk1、Mig-6、EGFR、MAPキナーゼが活性化するか否かを検証した。実際にはMDAMB231細胞に紫外線を照射後経時的に細胞をサンプリングし、イムノブロット法によりEGFRの自己リン酸化を各種pEGFRリン酸化抗体で解析した。また、Mig-6のリン酸化はPhos-tag gelおよびphosho-S251-Mig6リン酸化抗体で、Chk1のリン酸化はpS280およびpS354リン酸化抗体で、MAPキナーゼの活性化は活性化MPAKリン酸化抗体で検出した。その結果、紫外線照射によりChk1のS354だけでなくS280もリン酸化が亢進することが判明した。さらにMig-6のリン酸化状態の亢進もみられた。同時にEGFRの自己リン酸化の亢進とMAPキナーゼの活性化もみられた。
2: おおむね順調に進展している
DNA障害応答におけるEGFシグナル伝達経路作動の検証し、紫外線照射によりChk1のS354だけでなくS280もリン酸化が亢進することを見いだした。さらにMig-6のリン酸化状態の亢進とEGFRの自己リン酸化の亢進、MAPキナーゼの活性化が確認できた。以上よりおおむね順調といえる。
H25年度の研究によりDNA障害応答におけるEGFシグナル伝達経路が作動することが示唆された。今後は更なる検証を行なう。一方で、この一連の経路に14-3-3、TRB等のモジュレータータンパクやユビキチンシステムが関与するかを検証し、これらの機能と制御機構を解析する。さらにDNA障害によるチェックポイントを介した細胞周期の停止から細胞周期再侵入にこの経路が関与しているかを解析する。
H25年度の研究において、計画以上の分子や翻訳後修飾の存在が示唆された。それらの解析には時間と研究費がかかるため、次年度に持ち越す必要が生じた。関連分子や翻訳後修飾について、質量分析およびリン酸化抗体等を用いたIP-IB法等、多角的な方法で解析するため、主に消耗品費として使用する予定である。
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