我々はUVやハイドロキシウレア、ブレオマイシン等のDNA傷害性薬剤で細胞を処理すると、DNA傷害に伴いヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)の一種であるHBO1のSer50/Ser53がリン酸化されることを見いだした。siRNAを用いたATRのノックダウンやATR阻害剤によりUV照射で誘導されるHBO1のSer50/Ser53のリン酸化が低下することから、その責任リン酸化酵素がATRであることが判明した。H27年度の研究で、Ser50/Ser53がリン酸化されたHBO1はユビキチン化を受け、それを認識してHBO1をユビキチン化するユビキチンリガーゼはCUL4-DDB1/DDB2であることを見いだした。これまでHBO1がDNA損傷修復機構に機能するという報告はなかったが、それを示唆する予備的結果を基に、H28年度はHBO1を介したDNA損傷修復機構の研究を行った。まず、HBO1のリン酸化に伴い、ヌクレオチド除去修復(NER:nucleotide excision repair)に関わる因子がDNA損傷部位にリクルートされる事を見いだした。HBO1のSer50/53をAlanineに変異を導入するとこのNER関連因子のリクルートは阻害され、NER による修復も抑制される事が判明した。またHBO1によるヒストンH3のアセチル化がクロマチン構造を開く事が示唆され、それに伴いNER関連因子のリクルートが促進された。以上より、UV照射による塩基の損傷はATR によるHBO1のリン酸化を引き起こし、HBO1は損傷部位のヒストンH3をアセチル化してクロマチン構造変化を誘導する。それによりNER関連因子のリクルートが促進されNERに寄与することが強く示唆された。
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