研究課題
基盤研究(B)
肝臓特異的E-カドヘリンノックアウトマウス(CDH1ΔL)をE-カドヘリンfloxedマウスと肝臓特異的にCreリコンビナーゼを発現するalb-cre トランスジェニックマウスを交配させることにより作成した(CDH1ΔL)。発癌モデルとして、生後14日目のマウスに発癌剤ジエチルニトロサミン(DEN)を腹腔内投与し、7カ月後に屠殺するモデルと変異型Krasを発現するマウスモデルを用いた。CDH1ΔLマウスの肝臓は生後4週目までは特に異常所見は観られないものの、10週目ごろより自然発生的に門脈域を中心とした炎症が出現した。また、週齢とともにsirius red陽性、αSMA陽性である線維化が進展し、あたかも硬化性胆管炎様の病理所見を示した 。一方、コントロールマウス (CDH1F/F)ではそのような変化は観察されなかった。肝組織を用いてマイクロアレイの解析を行なったところ、CDH1ΔLではCDH1F/Fと比較して、幹細胞マーカーであるCD44、Sox9、CD133、Epcamの発現増加が認められた。免疫染色による検討では門脈域に出現した肝前駆様細胞にSOX9、Epcam、CD44が発現していることが明らかとなった。CDH1ΔLマウスでは低率ではあるものの、肝癌が自然発生した(約20%)。次にE-カドヘリンの発癌への影響を、肝臓特異的に変異型Krasを発現するマウスにて検討したところ、CDH1ΔLマウスではコントロールと比して、腫瘍数、腫瘍径の増加が観察された。さらに、CDH1ΔLの腫瘍の一部ではCD44, Sox9などの幹細胞マーカーの発現増加および上皮‐間葉転換 (EMT)が観察された。肝癌細胞株を用いた検討では、E-カドヘリンの発現とCD44の発現には負の相関が観察され、E-カドヘリン発現細胞株においてE-カドヘリンノックダウンすると、EMTが観察されるとともに、癌幹細胞化を示唆するCD44増加およびスフェロイド形成能の亢進が認められた。
3: やや遅れている
動物の飼育状況において交配がややうまくいかずに、動物モデルの検討がやや遅れている。その他は順調である。
癌幹細胞とEMTとの関連性についてはE-cadherinを中心に解析を進めており、着実な進捗があるが、癌幹細胞分離については未だに成功していない。肝癌になる以前の細胞群から、3次元培養に成功しているものの、その細胞が免疫不全モデルマウスにて腫瘍を形成しないことによる。現在いくつかの発癌モデルを試みており、網羅的な解析を行う予定である。
動物の飼育不良とそれに伴う発癌実験の遅れが主な原因である。すでに、発癌実験の遅れは取り戻しつつあり、本年度は当初の予定通りの使用額となる予定である。
すべて 2014
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Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 111 ページ: 1090-1095
10.1073/pnas.1322731111