研究課題
(背景)NAFLDにおける肝発癌機序はいまだ不明であり,その解明として適切な動物モデルの構築が望まれる.(方法)癌遺伝子の変異型kras発現させたalb-cre/LSL-KrasG12D,細胆管および幹細胞増生を伴う胆管炎を自然発症する肝臓特異的e-カドヘリンノックアウトマウス(alb-cre/CDH1f/f)および双方を交配させた肝臓癌を自然発症するalb-cre/LSL-KrasG12D/CDH1f/fを用いて,NAFLDモデルに準じて高脂肪食を摂取させた.炎症および腫瘍の発生について臨床病理学的検討を行なった.(結果)胆管炎を自然発症するalb-cre/CDH1f/fに7か月間高脂肪食を投与したマウスでは,体重はコントロールのalb-cre/CDH1+/+と同様に増加した一方で,通常食投与マウスと比較して胆管炎の程度は著しく増悪し,細胆管増生,胆管周囲の線維化,およびCD44陽性の幹細胞様が有意に増加した.さらに,肝胆道系酵素も上昇していたが,明らかな癌の発生は観察されなかった.通常食投与において,alb-cre/LSL-KrasG12Dは9か月程度で,alb-cre/LSL-KrasG12D/CDH1f/fは7か月程度で肝細胞癌を中心とした腫瘍が発生するが,これらのマウスに高脂肪食を投与したところ,3か月で全マウスに腫瘍が発生した.alb-cre/LSL-KrasG12Dでは肉眼的に2-10個程度の腫瘍が発生し,肝細胞癌がほとんど占めたが,alb-cre/LSL-KrasG12D/CDH1f/fでは肝臓全体に無数の腫瘍が発生し,胆管成分の混在した肝細胞癌や胆管癌を多く認めた.脂肪食投与群では通常食投与群と比較して,炎症性サイトカインであるTNFα,IL-6の増加およびその上流の重要なシグナル因子であるNF-κBの活性化を認めた.さらに,脂肪食投与によって活性化され,腫瘍形成に重要な因子であるHSF1の増加が脂肪肝部および腫瘍部において観察された.(結論)高脂肪食負荷は炎症を悪化させ,幹細胞増加を促し,肝細胞癌,胆管細胞癌の強力なプロモーターとなることが明らかとなった.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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