研究実績の概要 |
前年度までに、ヒト正常線維芽細胞株(TIG-3, Hs68, IMR90)、ヒト正常上皮細胞株(RPE, NHEK, NHEM)、マウス正常線維芽細胞株(MEF)を継代培養するか、もしくは活性化型Rasの過剰発現やDNA損傷ストレス(X線照射)によって細胞老化を誘導し、48時間培養した上清を回収し、超遠心法でエクソソームを分離後に、NanoSightを用いてサンプルの粒子径を測定すると同時に、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行いエクソソームが回収されていることを確認した。その結果、細胞老化をおこした細胞では、1細胞あたりのエクソソームの分泌量が増加していることが明らかとなった。さらに単離した分泌膜小胞を、CD63抗体を用いた免疫電子顕微鏡法による観察を行い、エクソソームマーカー蛋白を発現していることを確認した。 次に、上記の方法で回収したエクソソームサンプルをMS法により解析し、細胞老化の誘導前後でエクソソームに含まれる蛋白質がどのように変化するのかを明らかにした。そして、老化した細胞から分泌されるエクソソームに特異的に増加している蛋白を同定し、その蛋白がエクソソーム含まれてがん細胞に取り込まれることでがん細胞の細胞活性に影響を与えることを明らかにした。shRNAを用いてその蛋白のmRNAをノックダウンした細胞から回収したエクソソームではそのような活性を示さなかったことから、老化細胞が周囲の細胞の形質を変化させる原因因子であることが示唆された。現在は詳細な分子メカニズムについてさらなる解析を行っている。
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