研究課題/領域番号 |
25290051
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村上 善則 東京大学, 医科学研究所, 教授 (30182108)
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研究分担者 |
松原 大祐 東京大学, 医科学研究所, 講師 (80415554)
櫻井 美佳 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80508359)
後藤 明輝 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90317090)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肺腺癌 / 小細胞肺癌 / 細胞接着分子 / 増殖因子受容体 / CADM1 / 分子標的 |
研究概要 |
癌の新規診断、治療の分子標的を同定することを目指して、多くの癌でしばしば発現量の増減や欠如を示す細胞膜タンパク質、細胞接着分子群に注目し、(1)非小細胞肺癌などの固形癌において癌抑制遺伝子として機能することが知られている免疫グロブリン・スーパーファミリー細胞接着分子(IgCAM)であるCADM1や類似のIgCAM 分子群と、増殖因子受容体、トランスポーターとのクロストークによる治療効果予測法の開発、並びに(2)CADM1を標的とした小細胞肺癌の新規血清診断法、治療法の開発、を目的として基礎研究を行った。項目1については、CADM1が増殖因子受容体METに加えて、SRCとも細胞膜ラフト上で複合体を形成し、そのシグナルを抑制することを見出した。一方、項目2のCADM1のスプライシング・バリアントを標的とした診断用医薬品を開発する目的では、まずCADM1の細胞外断片のN-型、O-型糖鎖修飾の実態を質量分析法によって解析し、小細胞肺癌に特徴的な修飾糖鎖を同定した。次に糖鎖修飾を受けたCADM1細胞外ペプチド断片の精製や、当該タンパク質を発現しない遺伝子欠損マウスに対する免疫などの細胞工学的手法を駆使して、高特異性、高親和性の抗CADM1単クローン抗体の作成を進めた。また、CADM1を分子標的とする小細胞肺癌の治療薬開発を目指して、CADM1下流経路を解析し、CADM1-MPP3-DLG-PI3K-AKT、またはRAC1の分子経路を新規に見出した(PLoS One, 2014)。これらの分子経路は、低分子阻害剤を検索する際の標的経路になると期待され、実際PI3K阻害剤や AKT, RAC阻害剤が部分的に小細胞肺癌の増殖を抑制する予備的な結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
項目1.細胞接着分子と増殖因子受容体とのクロストークの実態解明に関しては、当初予定していたCADM1とMET, ERBB3との相互作用に加えて、新たにSRCとの相互作用、抑制効果を見出したことは期待以上の成果である。さらにその他の増殖因子経路との相互作用を解析し、特許取得へ向けた準備をしている。また、項目2.については、小細胞肺癌の診断薬、治療薬の両面でCADM1の標的分子とする詳細な解析を進めた。診断薬の開発のための基礎研究については、基盤となる高特異性、高親和性単クローン抗体の作成を進め、予定通りの進捗を得た。一方、治療薬の開発については、抗体医薬、低分子化合物、核酸医薬の3つのアプローチを考えて研究を進め、特に低分子阻害剤を検索する目的で、細胞を用いた検索系を確立し、PI3K阻害剤、AKT阻害剤、RAC阻害剤等を同定できたことは予想を上回る成果であり、今後のさらなるスクリーニングによる新規化合物の同定や、リード化合物の同定が強く期待される。最後に核酸医薬についても、CADM1の発現を抑制するsiRNA, shRNA, miRNAを複数同定しており、初年度としては十分な成果と考えられる。今後はウイルスベクターによる遺伝子導入などを検討する予定で、準備は順調に進んでいる。以上により初年度は期待以上の成果が得られたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
IgCAMなどの細胞接着分子と増殖因子受容体とのクロストークに基づく増殖シグナルの修飾は、既存の概念にない新しい方向からの細胞増殖制御のアプローチであり、基礎科学としても細胞接着分子は接着のみ、増殖シグナルは増殖因子と受容体、その先の核に至るシグナル伝達経路のみ、といった既存の研究指向を超える新しい研究手法、研究領域と考えられる。実際、CADM1とSRCは細胞膜上のラフトで共局在し、複合体を形成することを確認している。癌の分子標的治療に関しては、変異EGFRを発現する肺腺癌に対するゲフィチニブ治療のような著効を示す癌と薬剤の組み合わせはある程度限られており、分子標的薬耐性癌の克服や、頭頸部扁平上皮癌のように分子標的薬単独では効果が示せない癌に対する集学的治療の確立が引き続き重要であると考えられる。我々の基礎研究がこの方面で応用されるように、今後研究を発展させていきたい。一方、小細胞肺癌の診断、治療標的としてのCADM1の研究も、初年度としては十分な進展をみせていることから、さらなる研究の推進を図る予定である。低分子化合物については、PI3K阻害剤が最近細分化し、PI3K の alpha, beta, gamma, delta 各触媒ユニットに特異的な薬剤が開発されつつあることから、小細胞肺癌を対象としてさらなる解析を進める予定である。抗体医薬については、引き続き高特異性、高親和性の単クローン抗体の作成を続ける。さらに核酸医薬についても、ウイルスベクターなどのデリバリーを工夫することにより、 in vitro の細胞培養のみならず、マウスへの細胞の移植実験や、マウス移植腫瘍に対する実験的治療などへと発展させたいと考えている。
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