研究実績の概要 |
癌に対する新しいコンセプトに基づくDDS として抗腫瘍活性を有するウイルスを封入した血小板ベクターを開発する。これは癌間質での多数の微小出血部位に血小板が集積し、活性化されて凝固因子を放出するということからヒントを得た癌間質標的DDSである。前年度では、既に抗腫瘍作用を有することがわかっている不活性化センダイウイルス粒子(HVJ-E)を血小板に封入し、メラノーマもマウスモデルにおいて静脈内投与により抗腫瘍効果を示すことができた。今年度は、免疫細胞の腫瘍内侵潤を促進するケモカインであるIP10(CXCL10)を封入した血小板をメラノーマモデルマウスに静脈内投与したところ、抗腫瘍作用が認められた。その解析を行ったところ、T cel, NK cellの腫瘍内集積が著明に見られた。一方、血小版だけでも抗腫瘍効果があり、そのメカニズムとしてFoxP3陽性の制御性T細胞を抑制できることが分かった。驚いたことに担がんマウスの血小板には抗腫瘍作用が認められなかった。その原因として、CD40 liganndによるシグナル伝達が推測され、担がんマウスも血小板ではこの発現が低いことが分かっている。HVJ-EのCantell株では複製不能のDI粒子が多く、この粒子中に含まれる564塩基のウイルスRNAがRIG-Iとの親和性が高いことが知られている。実際に、このRNAを合成して癌細胞(PC3)に導入するとインターフェロンロンベータやNoxa, TRAILの発現が高く誘導された。そこでこのDI粒子を血小板に封入してB16F10メラノーマ細胞に作用させると細胞死の誘導が起こった。マウスモデルでの検証を行っている。
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