血小板ベクターに抗腫瘍免疫活性のある不活性化したセンダイウイルス粒子(HVJ envelope;HVJ-E)を封入し、メラノーマを移植したマウスの尾静脈より投与することにより腫瘍抑制に成功した。HVJ-Eは赤血球凝集作用があり、静脈内投与ができないが、それを解決する方法である。さらにGFP遺伝子を発現させたマウスメラノーマ細胞株B16-F10を尾静脈より注入して肺転移モデルを作成した。癌細胞5日後に腫瘍が肺に生着し転移巣が認められるので、その後HVJ-E封入血小板を2週間に5回尾静脈より投与した。PBS投与群や血小板のみの投与群と比較して明らかな転移巣の抑制が認められた。PBS群と比較してHVJ-Eを含まない血小板投与群でも腫瘍の抑制効果が見られた。この方法をHVJ-E以外の治療薬にも応用するため、NK細胞のケモカインであるCXCL10(IP-10)を封入した血小板ベクターを作成した。IP10はalpha-granuleに取り込まれdense granuleには取り込まれておらず、thrombinの刺激により培地中に放出された。IP-10封入血小板を皮内にメラノーマを移植したマウスの尾静脈から投与し、腫瘍組織でIP-10の放出を示唆する画像が得られた。2週間に5回投与する方法によりPBS群と比較して有意な腫瘍抑制が見られたが、血小板のみと比較するとIP-10封入群のほうが抑制傾向はあったが、有意差はつかなかった。やはり血小板自身に抗腫瘍作用があることが明らかになり、それを解析した結果、腫瘍組織中のFoxP3陽性の制御性T 細胞が血小板の投与で抑制されることがわかった。しかしこの抑制効果は、健常マウスの血小板では認められたが、担癌マウスの血小板ではなかった。健常マウスと担癌マウスで血小板の成分を比較するとCD40Lの発現が前者では高かった。CD40とCD40Lの作用により制御性T 細胞が抑制されるという報告があり、健常血小板での抗腫瘍効果はCD40Lを介した制御性T 細胞の抑制であることが示唆された。
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