研究課題
平成26年度は、前年度の研究結果に基づきFITC認識CAR-T細胞の腫瘍傷害活性とそのメカニズムについて詳細に検討した。第一に、腫瘍抗原としてCD20を発現するP815腫瘍細胞(CD20-P815)、EGFRを発現するP815腫瘍細胞(EGFR-P815)、FITC認識CAR-T細胞の3者を共培養し、そこにFITC標識した抗CD20抗体(FITC-anti-CD20)、FITC標識した抗EGFR抗体(FITC-anti-EGFR)、あるいは両方の抗体を添加し、72時間後の生存細胞について解析した。その結果、FITC認識CAR-T細胞はFITC-anti-CD20存在下ではCD20-P815を選択的に傷害する一方、FITC-anti-EGFR存在下ではEGFR-P815のみを傷害した。また、両方の抗体存在下では、CD20-P815とEGFR-P815の両者を傷害し、なおかつFITC認識CAR-T細胞の有意な増殖を認めた。第二に、EGFRとHer2の2つの腫瘍抗原を発現する乳がん細胞株に対するFITC認識CAR-T細胞の細胞傷害活性を検討したところ、FITC-anti-EGFR単独存在下、あるいはFITC-anti-Her2単独存在下に比べ、両者の抗体存在で有意に高い活性を示した。以上の結果から、FITC認識CAR-T細胞は抗体特異的に腫瘍傷害活性を示し、さらに複数の抗体を組み合わせることで腫瘍傷害活性が増強されることが示された。また、FITC標識した腫瘍血管指向性ペプチド(FITC-neovas pep)とFITC認識CAR-T細胞の組み合わせによるがん治療効果について検討した。EGFR陽性のヒト扁平上皮がんであるHSC4を免疫不全マウスに接種し、腫瘍が形成された時点でFITC認識CAR-T細胞を投与し、さらにFITC-anti-EGFR とFITC-neovas pepの片方もしくは両方を投与した。その結果、FITC-anti-EGFR とFITC-neovas pepの両方とFITC認識CAR-T細胞を同時に投与した群にて最も優れた抗腫瘍効果が認められた。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度はFITC認識CAR-T細胞システムの腫瘍傷害活性およびがん治療効果について、様々なモデルを用いてin vitroおよびin vivoにて実証でき、予定通りの進捗であった。
当初の予定通り、複数の抗原や腫瘍新生血管、MHC/腫瘍抗原ペプチド複合体を標的としたCAR-T細胞療法について研究開発を進めるとともに、学会や学術誌での発表をおこなう。
マウスを利用したin vivoでの実験予定が次年度にずれ込んだため、その購入費用の一部が差額として生じた。
In vivoでの抗腫瘍効果の実証実験を次年度に実施する予定であり、マウス購入費用として使用する。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 7件)
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