研究課題
基盤研究(B)
低フコース型ヒト化CCR4抗体(モガムリズマブ)は、日本で基盤的前臨床研究から、『The first in cancer patient』を含む臨床試験が実施された。結果、世界に先駆け、日本で再発又は難治性のCCR4陽性の成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)に対する承認(2012年)および、再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)および皮膚T細胞性リンパ腫に対する承認(2014年)を取得した薬剤である。よって本薬剤の最も安全かつ効果的な治療(革新的治療)を確立し、世界に発信することは日本の医師、研究者に課せられた責務であると考え本研究を計画した。本薬剤はCCR4陽性の制御性T細胞(Treg)を除去する作用を有する。従って、本剤投与によって抗腫瘍免疫応答が増強する可能性がある。よって今年度は、主にATLの原因ウイルスであるHTLV-1関連因子に対する、HTLV-1感染者での免疫応答を明らかにする事を目的とし、研究を進めた。HTLV-1関連因子の中で、Taxは、ATL発症に重要な役割を果たす。初めに、ATL患者より得たATL細胞をNOGマウスに移入し、ATLモデルを樹立した。そして、同一患者からHTLV-1 Tax特異的CD8陽性T細胞を増幅し、養子免疫治療実験を行った。結果、治療群では各臓器へのATL細胞の浸潤が抑制され、生存期間は有意に延長した。これらの結果は、ATL治療の標的分子としての、HTLV-1 Taxの妥当性を示すものである。また、モガムリズマブ治療を受けた多数例のATL患者の検討では、治療前に比較し、Tax特異的CD8陽性T細胞の存在比率が増加する傾向を認めた。これらの結果は、モガムリズマブ治療は、ADCCによりCCR4陽性ATL細胞を直接殺傷するのみならず、CCR4陽性Tregを除去し、抗HTLV-1免疫を増強させることを示唆する。
3: やや遅れている
多施設共同前方視的観察臨床研究”ATLに対するモガムリズマブ治療中の免疫モニタリング”へのATL患者登録が、当初の予定に比較し遅れている。また、登録症例においては、モガムリズマブを含んだ治療法の多様性が大きく、モガムリズマブそのものが生体に及ぼす免疫動態を結論するには、症例数が十分とは言えない。
多施設共同前方視的観察臨床研究”ATLに対するモガムリズマブ治療中の免疫モニタリング”に登録されたATL患者検体を用いて研究を進めていく。本臨床試験は観察研究であり、具体的な治療法についての規定はない。よって症例毎に治療法が異なる。具体的にはモガムリズマブ単独で治療されている症例もあれば、抗がん剤との併用がなされている症例もある。併用抗がん剤の種類も様々であり、モガムリズマブの投与間隔も様々である。観察される免疫動態は、併用薬の影響も大いに受けるため、純粋にモガムリズマブによる免疫動態を切り分け、明確にすることは困難である。この問題に対応するため、本臨床研究への患者登録促進をはかる。
多施設共同前方視的観察臨床研究”ATLに対するモガムリズマブ治療中の免疫モニタリング”へのATL患者登録が遅れているため、試料の解析費用が少額となった。登録症例から得た試料の解析費用に充てる。モガムリズマブそのものが生体に及ぼす免疫動態を結論するために、患者登録スピードの促進に努める。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (3件)
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