研究課題
基盤研究(B)
がんの遺伝子治療・ウイルス療法では、がん細胞だけにしか侵入・感染せず、正常細胞には影響を与えないよう改変された標的化ベクターの開発を目指すべきだが、未だ実用化には至っていない。私たちは最近、単純ヘルペスウイルス(HSV)の標的化改変に独自に成功した。ウイルス表面の糖タンパク質gDを本来の受容体に結合不能とすると同時に、epidermal growth factor receptor(EGFR)・carcinoembryonic antigen(CEA)などがん細胞表面マーカーに対する単鎖抗体を挿入した結果、すべて標的がん細胞のみに効率よくエントリーできる標的化HSVとなった。動物実験ではマウス皮下および同所性脳腫瘍モデルにて標的化ウイルスの腫瘍内投与により強力な抗腫瘍効果を認めた上、標的化ウイルスを経静脈投与するとウイルスの腫瘍への強い集積(正常臓器の100-1,000倍)を認めた。さらにマウス脳内投与後の毒性評価では、標的化ウイルスは野生型ウイルスの致死量の10万倍の粒子数を投与してもマウスに異常を生じないという成果を得た。本研究では、(1)標的化エントリー後のウイルスを腫瘍塊の中で効率よく伝播(スプレッド)させ、正常組織を傷害することなくがん細胞を殺傷し尽くすこと、さらに(2)様々なタイプのがんを個別標的化するために好適なターゲット分子とそれらに対する高性能標的化抗体を新規に同定・樹立することに取り組み、その成果を革新的なバイオ医薬としての実用化へつなげる。
2: おおむね順調に進展している
がん標的化HSVのスプレッドを促進しうる遺伝子改変に成功したことに加え、新規性・有用性の高いがん標的化抗体を複数樹立することに成功した。
これまでの研究を発展させ、さらにがん標的化HSVによる抗腫瘍効果の増強を図ると同時に、様々な種類のがん抗原をターゲットとした個別標的化ベクターシステムの構築を進めていく。
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