研究課題
本研究は、核酸の特殊構造であるグアニン4重鎖(G4)を安定化する新規化合物「G4リガンド」を創製し、がん幹細胞に対する選択的増殖抑制効果を評価するとともに、その分子機構を明らかにすることを目的とする。我々はこれまでに、天然化合物テロメスタチンおよび新規テロメスタチン誘導体(oxazole telomestatin derivatives: OTD)に代表されるG4リガンドが、テロメアG4を安定化してDNA損傷を誘導すること、難治がんの一種である神経膠腫およびそのがん幹細胞(glioma stem cells: GSC)に対して高い増殖抑制効果を発揮することを見出してきた。今年度は、これらの選択的効果の詳細な分子機構および新規誘導体OTDのマウス脳内投与時の制がん効果を明らかにすることを目指した。まず、GSCおよび血清刺激によって幹細胞性を消失させた非幹神経膠腫細胞の薬剤応答性について比較解析を行った。その結果、GSCでは非幹神経膠腫細胞と比べ、基底状態におけるCHK1キナーゼの発現レベルが高く、テロメスタチン処理によって生じる複製ストレス応答が強いことが明らかとなった。我々は前年度の検討により、テロメスタチンによるDNA損傷は主に複製に依存して生じることを見出しており、複製の過程で生じるDNAの1本鎖構造がG4形成に寄与し、これがG4リガンドの標的になると推定した。一方、がん研究会動物委員会による審査承認のもと、ヒトGSCの同所移植マウスに対する新規G4リガンドOTDのin vivo治療効果を検討した。その結果、OTDは忍容性用量の範囲内において、マウス脳内の腫瘍増殖を有意に抑制することが確認された。以上の成果は、GSCを標的とする新規抗がん剤開発のための基盤的知見であり、ひいては神経膠腫の再発抑止および予後改善に繋がるものと期待される。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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