研究課題
現行の治療技術でなお回復困難な進行期ヒト難治性悪性腫瘍を対象として、われわれが最近開発した“腫瘍ホーミングペプチド”(特定の腫瘍細胞系に高度の選択的吸収性を示す細胞膜透過型ペプチド)を応用した我が国の次世代制がん医療に貢献する腫瘍標的技術の基盤開発を実施継続している。当初腫瘍ホーミングペプチドがアクティブターゲティング機序で腫瘍への取り込まれるためこれをコンジュゲートし受動的拡散が輸送機序であるナノ粒子の特性をがん細胞・組織への能動的選択的な送達システムに変換した高効率腫瘍標的技術の構築を狙ったが、初年度の研究結果からデンドリマーおよびリポソーム・ペプチド複合体は一部肝に集積することが判明し、必ずしもナノ粒子との複合体が腫瘍標的の効率化に直結しないことが考えられた。この結果から複合体の生体実効的なデザイン化については今後詳細な検討を有する。従って、本年度は本研究の根幹的目的である高性能低侵襲性制がん技術のペプチドによる確立のために、腫瘍ホーミングペプチドの性能を革新的に向上する新たなランダムペプチドライブラリーの作成技術およびそれをソースとした新規腫瘍標的ペプチド分離技術を開発した。また、性能向上を企図した癌抑制遺伝子機能回復型p14ARFペプチドの改良デザイン化(ペプチド配列の27アミノ酸から12アミノ酸配列へのコア機能を維持した短縮とがん細胞内導入後のペプチド機能増強システムの構築)に成功し、in vivo膵がん移植モデルマウスにおけるがん細胞増殖抑制効果とペプチド感受性腫瘍の探索・同定、感受性を規定する細胞内因子の探索に関する成果を得た。
2: おおむね順調に進展している
腫瘍ホーミングペプチドとナノ粒子との複合体形成には利点と欠点があることが判明したが、生体適用の実現性を考慮し、昨年度に立てた「今後の推進方策」である新たな高性能配列ペプチドの開発を現計画と並行して実施するとした課題については基盤を確立できた。(現在、肺がん、肝がん、膵がん、グリオーマについて候補ペプチドを獲得)また、がん増殖抑制機能を発揮するペプチド配列については、プロトタイプに比較し一層の性能向上を発揮する癌抑制遺伝子機能回復型p14ARFペプチドの新デザインの確立とin vivo study、さらにがん細胞内での作用の向上を誘導する新たな方策を獲得できた。
腫瘍ホーミングペプチドの性能を革新的に向上する新たなランダムペプチドライブラリーの作成技術およびそれをソースとした新規腫瘍標的ペプチド分離技術を開発し、現在具体的に、肺がん、肝がん、膵がん、グリオーマについて新規高性能候補ペプチドを獲得しているため、今後はこれら候補ペプチドのin vitro, in vivoにおける腫瘍特異的な抗腫瘍効果やイメージング性能について詳細な解析による最高性能型ペプチドの絞り込みとスペックの検討を行う。
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