研究課題/領域番号 |
25290064
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
木村 圭志 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50332268)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分裂期 / 染色体 / 核小体 / RNA / NOL11 |
研究概要 |
核小体は真核生物の核内に存在する構造体で、リボソーム生合成の場として知られている。一方、近年の研究から、核小体が、分裂期(M期)制御をはじめとした細胞周期制御にも関与していることが示唆されてきている。本研究では、核小体RNAやタンパク質がいかに正常なM期染色体動態を制御しているかを明らかにすることを目的とした。 本研究では、M期に重要な核小体タンパク質を明らかにするため、595種類の核小体タンパク質のsiRNAをHeLa細胞に導入してM期進行への影響を解析し、58種類のタンパク質の候補因子を得た。申請者は、それら因子で最も顕著なフェノタイプを示したNOL11の解析を行った。 HeLa細胞を用いたiRNAの実験から、NOL11がM期キナーゼAurora BをM期染色体のキネトコア領域に局在させることを見出した。また、NOL11がM期中期の染色体の細胞赤道面上での整列や姉妹染色体分体間の接着に機能することを見出した。 次に、NOL11の相互作用因子を同定するためにアフィニティー精製を行い、NOL11がM期細胞でWDR43とCirhinと複合体を形成することを見出した。NOL11複合体は、RNA結合活性を有するCirhin介してM期染色体に結合した。さらに、この複合体が、Aurora Bの染色体結合の足場となるHistone H3のThr3残基(H3T3)のリン酸化をキネトコアに限局させ、その結果としてAurora Bがセントロメアに集積することが示唆された。 さらに我々は、NOL11複合体がRNAを介してM期染色体に結合していることを見出した。また、pre-rRNAがM期染色体の周辺に局在していることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、計画1)の「核小体RNAによるM期染色体動態の制御」に関しては、ツメガエル卵抽出液のシステムで、RNAを除去すると染色体の形態と整列に異常を生ずることから、RNAが染色体の構造の維持と整列に機能することを見出した。また、HeLa細胞を用いた解析から、pre-rRNAが特異的に染色体周辺に濃縮されていることを見出した。 計画2)の「NOL11によるM期染色体制御機構」のおいては、NOL11によるAuroraB局在制御機構を解析した。現在AuroraBがPP1ホスファターゼ、Cohesin、Pds5Bを相互作用する可能性を確認しており、それらの因子と協調的にAuroraB局在を制御することが示唆された。また、NOL11が他のタンパク質と相互作用してM期染色体を制御している可能性に関しては、タンデムアフィニティー精製により、WDR43、Cirhinの因子を同定した。 計画3)の「核小体RNA-タンパク質ネットワークの解明」に関しては、M期進行に関与する他の候補因子として、ESF1、DNTTIP2に着目している。また、RNA依存的にM期染色体に結合する因子として、MIBBP1Aを同定している。 上記のように、実験計画はおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進は、当初の研究計画に従って進行させる予定である。 研究は、大きく分けて次の4つのプロジェクトを行う。すなわち、計画1)としては「核小体RNAによるM期染色体動態の制御」。計画2)としては、「NOL11によるM期染色体制御機構」。計画3)の「核小体RNA-タンパク質ネットワークの解明」。計画4)は「核小体RNA-タンパク質ネットワークの制御」である。 計画1)は初年度に引き続き研究を進めるとともに、2年度以降は、RNAの特異性に関して、特に研究を推進する。計画2)では、NOL11複合体のM期染色体の制御機能解析をさらに進めるとともに、コンデンシンたトポIIなどの既知の染色体骨格タンパク質との関連に関しても解析を行う。計画3)に関しては、NOL11複合体以外の核小体タンパク質についても解析を行い、それぞれのタンパク質、或いはタンパク質複合体同士の関連も解析する。計画4)は2年度目から開始するプロジェクトである。本計画では、種々の細胞内外のストレスにより、核小体RNA-タンパク質間の相互作用が如何に変化し、M期染色体の動態が如何に制御されるかを解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を遂行するにあたって、プラスティック用品等は、使用後に洗浄し何度か繰り返し使用するなど、極力効率的に実験を行うことを心掛けた。従って、予定より少ない経費で、予定の研究計画を完了することができたので、次年度使用額が生じた。 核小体タンパク質であるNOL11複合体の構成因子を同定することができたので、個々の因子に関して詳細に解析を行いたい。また、NOL11複合体と相互作用する因子の解析も行いたい。それらの因子の挙動の解析には抗体が有効であるので、抗体の購入や作製費用に補てんしたい。また、それらの因子をノックダウンするためのsiRNAの購入費用にも補てんしたい。 さらには、情報収集や情報発信をするために、学会発表に参加するための旅費にも使用する予定である。
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