研究課題/領域番号 |
25290066
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
蒲池 雄介 高知工科大学, 環境理工学部, 教授 (90263334)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 発生・分化 / ゲノム |
研究実績の概要 |
microRNA(以下miRNA)は、機能性小分子RNAで、細胞の分化や増殖に重要な役割を持つ。数百種以上あるmiRNAのなかでも、mir-17-92クラスターがコードするmiRNA群は、脊椎動物の胚発生に必須であるとともに、がんmiRNAとしても非常に注目されている。しかし、mir-17-92クラスター遺伝子の発現制御機構、またそれぞれのmiRNAの生理機能の理解はいまだに不十分である。本研究は、ゼブラフィッシュのモデル生物としての利点を生かして、mir-17-92が受ける転写調節機構をSox-Mycの協調作用に注目して明らかにするとともに、mir-17-92に由来するmiRNA群の機能の解明を目指す。最終的には、Sox因子群とmicroRNAからなる遺伝子制御ネットワークとその胚発生過程における役割を明らかにする目的で実施する。 mir-17-92は、主要なmir-17a1-92a1クラスターに加えて、他のパラログのクラスターが存在する。ゼブラフィッシュのSox11転写因子のノックダウン胚では、いずれのクラスターに関しても一次転写産物の量が減少していることを見いだしている。これらのmiRNAクラスターがSox11の主要な標的遺伝子であれば、mir-17-92クラスター群の機能喪失胚はSox11転写因子のノックダウン胚と類似した表現型を示すと考えられる。このモデルを検証するため、mir-17-92クラスター群から産生されるmiRNAに対するモーフォリノアンチセンスオリゴを用いて、様々な組み合わせでmiRNAのノックダウンを行ったところ、必ずしも同じ形態的異常が生じるわけではなかったが、RT-PCRで遺伝子発現の変化を調べたところ、両者で発現上昇が見られる遺伝子があることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、ゼブラフィッシュをモデル生物として利用しており、交配を通して得られる胚が実験には必要とされる。研究代表者は、平成27年度に大阪大学から高知工科大学へと所属が変更になった。これに際して、ゼブラフィッシュ飼育用の水槽設備の移設を平成27年の7月に行った。この水槽設備を再構築し魚を移動させたところ、水カビの異常繁殖が起こり、水槽システムの維持が非常に困難な事態となってしまった。このため、一部の魚のみを残して小規模で水槽システムを運用しつつ、水カビの異常繁殖の低減を計った。以上の理由により、水槽設備の移設後にゼブラフィッシュの胚を利用した研究が全く出来ない期間が生じてしまい、研究計画の遅延が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
以下の項目の研究を連携させて進めることにより研究を進展させる。 (1) Sox11転写因子のノックダウン胚において、mir-17-92クラスター群の個々のmiRNAの発現を定量的PCR法ならびにin situ ハイブリダイゼーション法により測定し、miRNAごとの発現変化を調べる。 (2) Sox11/SoxB1が、mir-17-92以外の複数のmiRNAの発現にも関わっている可能性が予想される。引き続き、sox11およびsoxB1 遺伝子群に関して様々な組み合わせでノックダウン胚を行い、どのようなmiRNA遺伝子に発現変化が生じるのかを調べる。 (3) Sox転写因子によるmiRNA遺伝子群の直接的な制御を確かめるため、クロマチン免疫沈降法によりSox因子とmiRNA遺伝子群のゲノム領域との相互作用を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は、平成27年度に大阪大学から高知工科大学へと所属が変更になった。これに際して、ゼブラフィッシュ飼育用の水槽設備の移設を行った際に、水カビの異常繁殖が起こり、水槽システムの維持が非常に困難な事態となってしまった。このため、水槽設備の移設後にゼブラフィッシュの胚を利用した研究が全く出来ない期間が生じてしまい、胚を利用する実験の一部を次年度に行う必要が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に実施が困難となったゼブラフィッシュ胚を利用した実験、ならびにその胚利用してマイクロアレイや次世代シーケンサーを利用する研究を予定している。これらの実験には、多額の消耗品が必要になることから、これらの費用にあてる予定である。
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