研究課題/領域番号 |
25290071
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
橋本 真一 金沢大学, 医学系, 特任教授 (00313099)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | single cell / gene expression |
研究実績の概要 |
細胞集団の1細胞ずつの性格を明らかにし、真の細胞状態を把握することは生物学の研究にとって非常に重要である。本研究では微量/1細胞トランスクリプトーム解析法を開発すると共に、それを用いたがん幹細胞と免疫細胞の細胞集団の階層性を明らかにし、真の細胞状態を把握することで将来的に臨床研究に役立てることを目的とする。本年度は、昨年度に引き続き、DNA/RNA hybrid primerを用いた単一細胞トランスクリプトームの精度の向上に努めた。一方、単一細胞トランスクリプトーム法では1つ1つの細胞のコンストラクトを作製するものであるが、新たにバーコード化されたビーズに1細胞由来のmRNAを直径35マイクロメータのウェルで結合させ、1細胞を包括的に解析出来る革新的な技術を開発した。この方法により数千個から数万個の複数の単一細胞を解析することが出来る。また、この方法は前法よりも効果的にデータを得られることから、この方法を用いて新たに免疫細胞であるT細胞、がん細胞株の一部の1細胞遺伝子解析を行った。その結果、数百から数千の個々の1細胞の遺伝子発現情報が得られると共に、1細胞からの約1万個の遺伝子について解析できた。同一がん細胞株間の1細胞同士の相関は0.85以上で良好であった。この方法により得たデータを基にクラスタリング解析し、がん幹細胞と考えられる細胞から特異的/選択的に発現するマーカーを同定した。現在、細胞の性質を、データから得たマーカーを基にソーティングし、spherical colony formationで調べると共に、造腫瘍性をNOD/SCIDマウスへ移植して検証中である。得られた結果を基に細胞の階層性ならびに分化メカニズムを明らかにする。応用として癌免疫治療におけるモニタリングにおいて単細胞トランスクリプトームを行い細胞の変化と効果を検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回、新たにバーコード化されたビーズに1細胞由来のmRNAを直径35マイクロメータのウェル中で結合させ、1細胞を包括的に解析出来る革新的な技術を開発した。この方法により数千個から数万個の複数の単一細胞を解析することが出来ることから、細胞の解析が大変進んだ。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では、新たにバーコード化されたビーズに1細胞由来のmRNAを結合させる技術を利用 し、複数の単一細胞を解析する。前年度に引き続きがん幹細胞の単細胞トランスクリプトーム解析を行う。得られた結果を基にしてクラスタリング解析し、各細胞集団を同定するとともに遺伝子発現解析で得られた情報から特異的/選択的に発現するマーカーとして使用出来る表面抗原を選定する。もし、その分子の抗体が入手可能であれば、それを基に再び細胞株をソーティングする。入手出来なければペプチド合成をして抗体を作製する。ソーティングした細胞をspherical colony formationで調べると共に、がん幹細胞の造腫瘍性はNOD/SCIDマウスへ移植して検定する。がん幹細胞が特定出来ると予想される分子並びに抗体が見つかれば、それを用いてマウス移植実験にて抗体治療を行う。ここまで細胞株による検証と動物実験であるが、次に臨床サンプルで実験を行う。さらに、抗原刺激した免疫細胞が分化の過程でどのよう変化して行くか単細胞トランスクリプトーム解析を行いクラスタリング解析する。得られた結果を基に細胞の階層性ならびに分化メカニズムを明らかにする。応用として癌免疫治療におけるモニタリングにおいて単細胞トランスクリプトームを行い細胞の変化と効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析法の条件検討に時間がかかったこと、細胞のアッセイ量が少なかったため次年度の使用が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞の単離及び細胞のアッセイに使用する予定である。また、新たな方法に要するプレート、試薬等に使用する予定である。
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