研究課題
細胞集団の1細胞ずつの性格を明らかにし、真の細胞状態を把握することは生物学の研究にとって非常に重要である。本研究では微量/1細胞トランスクリプトーム解析法を開発すると共に、それを用いたがん幹細胞と免疫細胞の細胞集団の階層性を明らかにし、真の細胞状態を把握することで将来的に臨床研究に役立てることを目的とする。1、2年度はDNA/RNA hybrid primerを用いた単一細胞トランスクリプトームの精度の向上に努めた。一方、単一細胞トランスクリプトーム法では1細胞ずつのコンストラクトを作製するものであるが、本研究において数百以上の1細胞の遺伝子発現を同時に観察出来る革新的な技術(Nx1-seq)を開発した。バーコード化されたオリゴdTビーズに1細胞由来のmRNAを容積20ピコリットルのウェル中で結合させる。この方法により数千個から数万個の複数の単一細胞を解析することが出来る。また、この方法は前法よりも効果的にデータを得られることから、この方法を用いて新たにがん細胞株、末梢血単核球の1細胞遺伝子解析を行った。その結果、がん細胞株では数百から数千の個々の1細胞の遺伝子発現情報が得られると共に、1細胞からの約1万個種類の遺伝子について解析出来た。同一がん細胞株間の1細胞同士の相関は0.85以上で良好であった。一方、末梢血単核球は単球、T細胞、B細胞、NK細胞にクラスタリングされこの方法により細胞の多様性が測定出来る事が明らかとなった。さらにこの方法により得たがん細胞株のデータを基にクラスタリング解析し、がん幹細胞と考えられる細胞から特異的/選択的に発現するマーカーを同定した。今後、得られた結果を基に細胞の階層性ならびに分化メカニズムを明らかにする。応用として癌免疫治療におけるモニタリングにおいて単細胞トランスクリプトーム解析を行い細胞の変化と効果を検証する。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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