研究課題/領域番号 |
25290072
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
塚原 俊文 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (60207339)
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研究分担者 |
鈴木 仁 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (00447690)
藤本 健造 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (90293894)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 疾患治療 / 点変異 / RNA Editing / 脱アミノ化 / 蛍光タンパク質 / 遺伝コード修復 / RFLP / 恒常的発現細胞株 |
研究実績の概要 |
従来の遺伝子治療は機能を失った遺伝子を外来導入遺伝子によって代償するものであった。本研究では、生体内のRNA Editing機構を化学的に模倣し、部位特異的に塩基を脱アミノ化して遺伝暗号を修復することを目指している。具体的には、GFP 遺伝子の199T>C 変異がBFP となることに注目し、BFP-mRNAに化学的に199C>U 変異を誘起してGFP とする方法を確立する。5'端に脱アミノ化用官能基CVU、あるいはCNVKを有するODNを設計・合成して部位特異的な脱アミノ化効率を確認したところ、CNVK含有ODNは脱アミノ化効率が高いものの、60℃の高温でしか作用しないことが明らかとなった。一方、CVU含有ODNは37℃でも脱アミノ化の誘起が可能であった。 今年度はCVU含有ODNを用いたBFP-mRNAの部位特異的脱アミノ化を確認した。In vitro転写によって調製したBFP-mRNAとCVU含有ODNを混合後、光照射による結合、熱処理による脱アミノ化、別波長の光照射による解離による部位特異的脱アミノ化処理を行った。反応産物は逆転写後にPCR-RFLPを行って部位特異的な脱アミノ化効率を確認した。37℃、10日間の処理によって6%程度の部位特異的脱アミノ化が観察された。そこで、人為的RNA EditingされたBFP-mRNAをin vitro翻訳し、合成したタンパク質の蛍光を確認したところ、GFPに特異的な蛍光が検出され、mRNAの一部がGFPのmRNAとなっていることが確認された。 また、効率的に脱アミノ化を誘起するODNのデザインについても検討し、ヘアピン長や相補的配列長に最適な条件が存在することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究によって全長のBFP-mRNAを標的分子とした部位特異的脱アミノ化が可能であること、また実際に部位特異的脱アミノ化を受けたmRNAから機能を有するタンパク質が合成されることが明らかとなった。これは、人為的なRNA Editingによって、変異したmRNAを修復できることを示しており、大きな成果と言える。また、人為的RNA Editingを誘起するための合成ODNのデザインについても重要な知見が得られ、実用化に向けて前進した。 また、共同研究者である藤本は、光照射によって生体内で機能発現するプロドラッグの開発や、CNVK含有ODNを用いた光照射による遺伝子発現制御にも成功しており、これらの技術を応用することで、細胞内の人為的RNA Editingが可能となったと考えている。既にBFP遺伝子を恒常的に発現するHEK293細胞株の樹立も終了していることから、最終年度に向けて細胞内での遺伝コード修復法の確立に向けて準備は整った。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は細胞内でのBFP-mRNAの部位特異的脱アミノ化(即ち化学的RNA Editing)の実証と、遺伝コード修復による疾患治療法の検証を行うと共に、変異誘起がDNAにも及んでいるか否かを検証する。 BFPを恒常的に発現する細胞に対して、CVU含有ODNを用いた細胞内でのBFP199C>Uの置換をRT-PCR-RFLPによって確認する。部位特異的脱アミノ化が確認されたら、同様に処理した細胞からタンパク質を抽出し、抗体を用いたウエスタンブロットや蛍光イメージアナライザーを用いた解析でGFPタンパク質の生合成と変異修復効率について確認する。 本法は理論的にはRNAだけでなく、一本鎖DNAに対しても塩基配列特異的な脱アミノ化を誘起する。従って、DNA複製や転写時において、部分的に一本鎖となったDNAに対しても作用する可能性がある。RNA修復が確認された細胞の、ゲノムDNAにインテグレートされたBFP遺伝子を解析し、ゲノム上での遺伝コード修復の可能性を検討する。BFP-DNAの修復が確認された場合には、他の遺伝子に障害がないかを検討する。なお、生体には変異DNAを修復する機構が存在しているため、いったん変異修復されてGFPとなったDNAが再び変異型であるBFPに戻る可能性が高いとも考えられる。従って、変異修復が長時間(あるいは経代培養を経ても)持続するか否かについても検証する。塚原と鈴木が連携して研究を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
基金分については、研究の持続的な発展のため、研究期間の全体で計画的に使用することを見込んでおり、そのために使用残額とした。今後の研究計画遂行のために必要不可欠なものであると考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
研究補助のためのリサーチアシスタントの雇用に係る経費、および試薬・消耗機材購入のための物品費、調査のための国際学会への参加費等としての使用を計画している。
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