研究課題/領域番号 |
25290073
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
開發 邦宏 大阪大学, 産業科学研究所, 特任准教授(常勤) (70419464)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 核酸塩基 / 塩基配列識別 / ペプチド核酸 |
研究概要 |
A型インフルエンザウイルスH1型のタミフル耐性は、同ウイルスの酵素“ノイラミニダーゼ”の触媒活性部位に位置する274番目ヒスチジンがチロシンに変異することが主要因である。現在、このノイラミニダーゼの変異を抗体で検出する技術はない。一方、このアミノ酸変異はノイラミニダーゼをコードするゲノムの1塩基変異(G→A)によるものであり、PCRとゲノム配列解析などにより診断することは可能である。しかしながら、感染症の診断現場においては遺伝子解析により患者が罹患したウイルスがタミフル耐性かどうかを遺伝子診断することは現実的ではない。そこで、ウイルスゲノムの一塩基変異を核酸間の室温条件における結合の有無で迅速に識別する新規核酸分子の創製を目指した。 本年度は、タミフル耐性ウイルスに対して完全相補配列を有するペプチド核酸(anti-OPR PNA; anti-oseltamivir phosphate-resisitant PNA)を合成し、タミフル耐性ウイルスゲノム配列、および感受性ウイルスのゲノム識別能を評価した。 その結果、ペプチド核酸のチミン塩基の代わりに、チオウラシルを用い、さらにそのチオウラシルの6位にプロピル基を導入すると、ミスマッチ配列に対する結合能が大幅に減少することが明らかになった。Anti-OPR PNAのタミフル耐性配列に対する会合体の安定性と、その1塩基ミスマッチ配列であるタミフル感受性配列に対する安定性の差が天然核酸では約7℃しかなかったのに対して、約20℃に広がることが明らかとなった。 以上のことから、ピリミジン塩基の6位という、核酸間の塩基対形成に関与しない部分の置換基が対面の核酸塩基の相補性に従い、相補鎖との安定性に影響するという興味深い結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度では、ペプチド核酸(PNA)のチミン塩基を2-チオウラシルとし、さらにその6位に化学修飾を施した新規核酸分子の合成に成功した。次に、タミフル耐性ウイルスのノイラミニダーゼをコードするゲノム配列に相補的なオリゴマーのチミンの代わりに導入した。そして、完全相補的なタミフル耐性ウイルスゲノム配列、又は、一塩基ミスマッチ配列を含むタミフル感受性ウイルスゲノム配列を含むDNAに対して作用させた。その結果、新規核酸塩基を含むPNAは、タミフル耐性配列に選択的に結合し、当初の目標であった、一塩基変異配列との会合体形成能を約7℃から約20℃まで拡大することに成功した。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
核酸塩基のうち、ピリミジンの6位置換基は、非相補鎖に対する安定性を低下させることが明らかとなった。その一般性を確認するとともに、ピリミジンの5位にも種々の置換基を導入して、その配列選択性に及ぼす影響を検証するとともに、さらに相補鎖識別能の高い分子の創製を目指す。また、インターカレーター分子なども化学修飾し、一塩基変異配列をさらに効果的に識別することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
2014年3月中に技術補佐員による研究補助業務を委託する予定であったが、候補者の家族の転勤が急遽決まり、技術補佐の雇用ができなくなり、他の候補者を探すことが必要となったため。 技術補佐員の雇用開始が当初計画より1か月遅れた分、雇用修了時期も1か月ずらすことで適切に研究費の使用計画を実施する予定である。
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