研究課題/領域番号 |
25290079
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
矢口 貴志 千葉大学, 真菌医学研究センター, 准教授 (60361440)
|
研究分担者 |
廣瀬 大 日本大学, 薬学部, 准教授 (20513922)
田中 玲子 千葉大学, 真菌医学研究センター, 助教 (60143319)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 次世代シーケンサー / 種多様性 / DNA / 病原真菌 / マイクロサテライト |
研究実績の概要 |
千葉大学真菌医学研究センターでは多くの病原真菌を世界規模で収集、保存、提供している。その保存株を系統的に維持管理するには正確な分類・同定が必須である。また、同種でも生物学的、遺伝的性状は多様である。保存株において、真菌の分類・同定にその一部分の塩基配列が使用されているリボゾーム (r-) およびミトコンドリア (mt-)DNA の全塩基配列において、次世代シーケンサーを使用して決定し、種同定の精度を高め、高次元な分類を行う。さらに個体識別に有効なマイクロサテライト解析と統合し、種の多様性について詳細に検討する。病原真菌は、菌株に様々な情報(患者の背景、治療経過、菌株の遺伝情報、薬剤感受性、病原性に強弱、地域性など)が付加されることよって、資源として有効に活用できる。本研究は、これまで世界規模で収集された貴重な保存株、主要な病原真菌である Candida albicans、Aspergillus fumigatus およびそれら関連種に新たな情報を付加し、その価値をさらに高めることを目的とする。得られた塩基配列データは、原因菌の迅速な性状の解析、真菌症の詳細な診断などに発展させることができる。また、千葉大真菌センターですでに公開している保存株の情報(臨床情報、病原性、薬剤感受性などの性状)とともに新たに得られた結果を追加し、データベースとして整理し公開する。菌株と合わせてこれら情報は、研究者コミュニティにとって利用価値が高く、新たな研究の展開に貢献できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、千葉大学真菌医学研究センターが保有する臨床由来のAspergillus fumigatus 130株及びCryptococcus neoformans 176株について、Rad-Seq法によるゲノムワイドな一塩基多型により遺伝子型を決定した。遺伝子型データを基に集団遺伝学的解析を進めたところ、実験に供試したサンプル数あたりの決定率はそれぞれ94%と92%であった。今後はマイクロサテライトを対象とした遺伝子型決定を行う。 また、A. fumigatusとは形態的には類似するが、分子系統的に識別可能な関連種 A. lentulus、A. udagawae、A. viridinutans がアスペルギルス症の原因菌として単離される報告が増加している。我々は、収集した関連種の薬剤耐性試験から、これら関連種はアゾール系薬剤に対する感受性がA. fumigatusと異なることを明らかに、関連種はアゾール系薬剤に対し自然耐性を有することを明らかにしてきた。咋年度は、関連種おいて20株の全ゲノム配列をスキャフォールドレベルでの決定を行った。今年度は、A. lentulus、A. udagawaeの基準株に関してPaeBio(第3世代シーケンサー)を使用し完全長の決定を行った。今後、A. viridinutansの基準株(分子系統分類により数種に分割)に関してPacBioを使用し完全長の決定を行う。これら結果を基に薬剤感受性の違いをA. fumigatusと比較ゲノム解析を行うことにより推定する。
|
今後の研究の推進方策 |
H28 年度は、千葉県産の臨床由来と環境由来の Aspergillus fumigatus において、9 個のマイクロサテライトマーカーを用いた遺伝子型、Rad-seq 解析の結果と、薬剤感受性、分離源などの菌株情報と菌株の遺伝子情報との関連性を明らかにする。また、A. fumigatus の関連種 A. lentulus、A. udagawae、A. viridinutans において、9個のマイクロサテライトマーカーを用いて遺伝子型を決め、Rad-seq 解析(ゲノムワイドな一塩基多型解析)を実施する。A. lentulus、A. udagawaeの基準株に関してはPacBio(第3世代シーケンサー)を使用し完全長の決定を行った。今後、A. viridinutansの基準株(分子系統分類により数種に分割)に関してPacBioを使用し完全長の決定を行う。これら結果を基に薬剤感受性の違いをA. fumigatusと比較ゲノム解析を行うことにより推定する。 本計画では、illumina 社の次世代シーケンサー MiSeq による配列データの取得を予定している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(千葉大)DNAの抽出、精製に手間取り、年度内に納品可能なPacBio依頼のためのサンプル調製が終了しなかったため。PacBioは高品質なデータが得られるため、今後も活用する予定である。 (日大)野外環境中からの病原真菌の分離培養実験に予想していたよりも多くの時間が掛かってしまい、それらの株に対して行うDNA実験が予定通りに終わらなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
(千葉大)DNA精製を確実に行い、今年度PacBio依頼の予定のものと同時にサンプルを提出する。 (日大)本年度5月までにシークエンス解析に掛かる費用として全て使用する予定である。
|