研究課題/領域番号 |
25290082
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村山 美穂 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (60293552)
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研究分担者 |
福田 智一 東北大学, 農学研究科, 准教授 (40321640)
大沼 学 独立行政法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 研究員 (50442695)
幸島 司郎 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (60183802)
伊谷 原一 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (70396224)
井上 英治 京都大学, 理学研究科, 助教 (70527895)
田中 正之 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (80280775)
杉浦 秀樹 京都大学, 野生動物研究センター, 准教授 (80314243)
森村 成樹 京都大学, 野生動物研究センター, 准教授 (90396226)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遺伝子 / ゲノム / 細胞 / 野生動物 / データベース |
研究実績の概要 |
本研究では、バンクの活用性を高めるために、ゲノム情報量を増強し、フィールドとラボの連携によって、野生動物の保全に必要な情報の集積と発信を目指す。 1)ゲノム・細胞データバンクの充実:野生動物研究センターでは、これまでに哺乳類238種15626個体、鳥類184種8663個体のDNA試料を保存した。国立環境研究所では国内の絶滅危惧種20種139個体を受け入れ、凍結用チューブ1,826本の試料を凍結保存した。またネパールにおいてインドサイの試料採取を開始し、皮膚組織1個体分と血液2個体分の採取を行った。iPS細胞を樹立するための前段階としてアカウミガメの細胞へ効率よく遺伝子導入するための条件検討を行った。アカウミガメの細胞へレンチおよびレトロウィルスを用いて、感染時に一過性に37℃で培養することで効率よく遺伝子導入できることが明らかになった。今後、山中4因子を発現する遺伝子カセットを導入する。 2)マーカー解析:国内では幸島、屋久島のニホンザルや東北地方のイヌワシの血縁判定や血統登録を進めた。海外ではガボン共和国、ムカラバドゥドゥ国立公園で採取した哺乳類の糞をDNAバーコードを用いて種同定し、霊長類、偶蹄類、食肉目など19種の哺乳類が生息していることを明らかにした。哺乳類のDNAバーコードには、チトクロムbが最も適していることも明らかにした。また、野生チンパンジーの糞試料から、マイクロサテライトマーカーを用いた個体識別を行なった。 3)ネットワーク形成:連携する動物園とデータベースに関する意見交換会を開催し、性判別の実験を共同で実施した。また海外研究拠点のガーナ大学から研究者を京都大学に招聘し、国際セミナーを実施した。さらに、ヨーロッパや米国から野生動物ゲノム解析ネットワークの中心となっている研究者を招聘して、国立環境研究所において国際セミナーを開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
多数試料の保存と解析が実施でき、情報の一部をホームページで公開した。国内飼育施設や海外研究拠点との相互連絡を密にとって、ネットワークを形成し、研究会を開催し、共同研究を推進している。またヨーロッパと米国のネットワークのハブ機関から招聘して国際会議を開催し、試料保存と共同研究について話し合った。したがって当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
細胞保存とiPS化、遺伝情報の解析、飼育施設とのネットワーク強化を行う。前年度の試料及び行動データの集積を引き続き行うとともに、開発したマーカーを用いて血縁や多様性の解析を行う。飼育観察現場とラボを相互訪問して、試料採取や行動などの情報収集を行い、保全や繁殖に必要な遺伝情報を選別する。飼育動物について動物種ごとに、新規開発あるいは既知のマーカーを用いて、個体の遺伝子型を解析・登録する。飼育施設との緊密な連携のもと、必要な情報の質と量を判断して、効率よく解析を進める。野生動物についても、類人猿やイヌワシで血縁解析を進め、ddRADシーケンスなど、全ゲノム解析の新手法を用いて、希少野生動物のゲノム情報を充実させ、既知の種の配列とも比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、多様な種で細胞を保存し、iPS化を進める予定であった。しかし非侵襲的な細胞採取による培養が困難であったため、初期培養ができず、iPS化に進めなかった種が多い。
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次年度使用額の使用計画 |
4-7月に多様な種の細胞を採取し、新しい方法による初期培養を行って多様な種の細胞株を樹立し、8月以降にiPS化を行う。
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