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2014 年度 実績報告書

代謝を網羅的に制御するエピゲノムシグナル機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 25291002
研究機関東京大学

研究代表者

稲垣 毅  東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (10507825)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2017-03-31
キーワードエピゲノム / JMJD1A / 褐色脂肪細胞 / アドレナリン受容体 / UCP1 / 核内受容体
研究実績の概要

ヒストンH3K9の脱メチル化酵素JMJD1Aの265番目のセリン(S265)がβアドレナリンシグナルによってリン酸化されることでAdrb1、Ucp1などの代謝関連遺伝子群の発現を制御するという知見に基づき、本年度の研究ではさらに詳細な分子機構を解明した。プロテオミクス法と免疫沈降後のイムノブロット法を用いた検討によって、JMJD1Aがクロマチン再構成複合体であるSWI/SNFタンパク質複合体と結合し、このSWI/SNFを介して核内受容体であるPPARγと結合することを明らかにした。さらにSWI/SNFの構成タンパクの遺伝子Arid1aやBrg1、Baf60bを褐色脂肪細胞株(kBAT細胞)内でノックダウンすることで、S265リン酸化JMJD1AがSWI/SNFを介してPPARγと結合し、標的遺伝子であるAdrb1、Ucp1の発現制御を制御することを証明した。この結果、JMJD1Aがゲノム上の特異的な結合部位を決定する機構が、SWI/SNF、PPARγタンパク複合体を介したPPREへの結合であることを示した。続いて、ChIP-seq法、ChIP-PCR法を用いてkBAT細胞におけるJMJD1AやARID1A、BRG1、BAF60b、PPARγ、H3K4me3、H3K27Acのゲノム上の位置について明らかにした。この結果、JMJD1A、SWI/SNF、PPARγがAdrb1遺伝子の転写開始点から22 kb、44 kb上流にあるエンハンサー領域にあることを発見し、アドレナリン刺激によってこれらのエンハンサー領域がプロモーター領域に近づけられることで、転写制御を行っていることを、Chromatin conformation capture法(3C法)、リポーターアッセイ法、RNA Polymerase IIのChIP-PCR法をもちいて明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本年度計画していた、リン酸化JMJD1Aがクロマチンリモデリング複合体を介して標的とするゲノム上の領域に結合する機構を明らかにし、さらにChIPシークエンス法、3C法、リポーターアッセイ法を駆使することで、エンハンサーとプロモーターの近接関係が制御される機構を明らかにすることが出来た。本研究成果においては、一か所のアミノ酸がリン酸化されたJMJD1Aが、クロマチンリモデリング複合体であるSWI/SNFと複合体を形成することを明らかにするとともに、ゲノム上の特異的な結合に核内受容体であるPPARγが関与することを明らかにした。さらに、この結合によってエンハンサーとプロモーターの近接関係が制御されることで標的遺伝子の発現調節に関わるという、寒冷刺激時に短時間に起こる遺伝子発現制御の新機構を詳らかにすることが出来た。上記の成果は、論文としてまとめて投稿し、最近Nature Communications誌にアクセプトされた。このように、本研究で予定していた当初計画が想定より早く達成できているものと評価する。

今後の研究の推進方策

今後、リン酸化を受けたJMJD1Aのリーダータンパク質の解析を行う目的で、プロテオミクス解析を引き続き行う。とくに、リン酸化を受けたJMJD1Aの複合体解析やホスファターゼの同定を目指す。一方、寒冷刺激とJMJD1Aリン酸化との関連において、JMJD1Aグローバルノックアウトマウスのほかに、リン酸化部位に変異を入れたノックインマウスを作製・解析することで、体温調節、代謝調節等の生理作用に与える影響を検討する。

次年度使用額が生じた理由

実験用マウス繁殖用のマウス購入を予定していたが、既存のマウスの掛け合わせに遅れが生じたため、次年度初めに繁殖を開始することとし、購入を遅らせた。

次年度使用額の使用計画

実験用マウス繁殖用のマウスを購入し、繁殖を継続する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件) 備考 (3件)

  • [雑誌論文] JMJD1A is a signal-sensing scaffold that regulates acute chromatin dynamics via SWI/SNF association for thermogenesis2015

    • 著者名/発表者名
      Abe Y., Rozqie R., Matsumura Y., Kawamura T., Nakaki R., Tsurutani Y., Tanimura-Inagaki K., Shiono A., Magoori K., Nakamura K., Ogi S., Kajimura S., Kimura H., Tanaka T., Fukami K., Osborne T.F., Kodama T., Aburatani H., Inagaki T.*, Sakai J.* (*Corresponding author)
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      in printing

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] The FBXL10/KDM2B scaffolding protein associates with novel polycomb repressive complex-1 to regulate adipogenesis2015

    • 著者名/発表者名
      Inagaki T.*, Iwasaki S., Matsumura Y., Kawamura T., Tanaka T., Abe Y., Yamasaki A., Tsurutani Y., Yoshida A., Chikaoka Y., Nakamura K., Magoori K., Nakaki R., Osborne T.F., Fukami K., Aburatani H., Kodama T., Sakai J.* (*Corresponding author)
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 290(7) ページ: 4163-77

    • DOI

      10.1074/jbc.M114.626929

    • 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] PPAR beta/delta activation of CD300a controls intestinal immunity2014

    • 著者名/発表者名
      Tanaka T., Tahara-Hanaoka S., Nabekura T., Ikeda K., Jiang S., Tsutsumi S., Inagaki T., Magoori K., Higurashi T., Takahashi H., Tachibana K., Tsurutani Y., Raza S., Anai M., Minami T., Wada Y., Yokote K., Doi T., Hamakubo T., Auwerx J., Gonzalez F.J., Nakajima A., Aburatani H., Naito M., Shibuya A., Kodama T., Sakai J.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 24;4:5412 ページ: 1-9

    • DOI

      10.1038/srep05412

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 脂肪細胞における新規エピゲノム制御機構2015

    • 著者名/発表者名
      稲垣毅、阿部陽平、Rozqie Royhan、松村欣宏、川村猛、仲木竜、鶴谷悠也、谷村恭子、田中十志也、児玉龍彦、油谷浩幸、酒井寿郎
    • 学会等名
      第52回日本臨床分子医学会学術集会
    • 発表場所
      京都みやこメッセ
    • 年月日
      2015-04-11
    • 招待講演
  • [学会発表] FBXL10によるエピゲノム複合体を介した脂肪細胞分化調節機構2014

    • 著者名/発表者名
      4.稲垣 毅、岩崎 聡、松村欣宏、川村 猛、阿部陽平、吉田文乃、中村加奈子、馬郡健太、仲木 竜、田中十志也、児玉龍彦、油谷浩幸、酒井寿郎
    • 学会等名
      第37回日本分子生物学会年会 (ワークショップ)
    • 発表場所
      神奈川県横浜市パシフィコ横浜
    • 年月日
      2014-11-25
  • [学会発表] エネルギー代謝を制御するJMJD1Aによる新規のエピゲノム制御機構2014

    • 著者名/発表者名
      稲垣 毅
    • 学会等名
      第14回 Islet Biology 研究会
    • 発表場所
      東京都千代田区都市センター
    • 年月日
      2014-08-02
    • 招待講演
  • [学会発表] JMJDIA Regulates Metabolic Gene Expression by Mediating Long-Range Genomic Interactions in Response to β-Adrenergic Stimulation2014

    • 著者名/発表者名
      稲垣 毅
    • 学会等名
      第46回日本動脈硬化学会総会・学術集会 (English session)
    • 発表場所
      東京都新宿区京王プラザホテル
    • 年月日
      2014-07-11
    • 招待講演
  • [備考] 稲垣毅 東京大学代謝医学分野酒井研究室

    • URL

      http://www.mm.rcast.u-tokyo.ac.jp/member/inagaki.html

  • [備考] 東京大学先端科学技術研究センター 研究者プロフィール

    • URL

      http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/people/staff-inagaki_takeshi.html

  • [備考] LSBM 稲垣毅

    • URL

      http://www.lsbm.org/staff/inagaki.html

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公開日: 2016-06-01  

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