研究課題/領域番号 |
25291003
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
剣持 直哉 宮崎大学, フロンティア科学実験総合センター, 教授 (00133124)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リボソーム / 疾患モデル / 翻訳 / ダイヤモンド・ブラックファン貧血 / 造血異常 / 発がん / 核小体 / ゼブラフィッシュ |
研究実績の概要 |
mRNAの選択的翻訳を制御する「リボソームCODE」の存在を明らかにし、その破綻が引き起こすリボソーム病の発症機構を明らかにするために以下の解析を行った。 1. DBAモデルにおいて翻訳効率が変動した遺伝子の解析:ゼブラフィッシュDBAモデルのポリソームmRNA解析およびトランスクリプトーム解析により翻訳効率が大きく変動した遺伝子のうち、造血に関与する遺伝子およびエクソーム解析で変異が同定された遺伝子の計8種類に着目して疾患発症との関連について解析した。mRNAの注入による遺伝子の過剰発現、アンチセンスオリゴを用いたノックダウン実験を行った結果、現時点で2つの遺伝子がDBA発症に関与している可能性が明らかとなった。 2. RNA修飾の解析:rRNAの修飾が欠損したゼブラフィッシュモデルおよび修飾酵素(ディスケリン)を欠損した先天性角化不全症(DC)モデルを作製し、ポリソームのmRNA解析およびDNAチップを用いたトランスクリプトーム解析を行った。その結果、翻訳効率が大きく変動している遺伝子を複数同定した。 3. ゲノム編集技術を用いたDBAモデルの作製:CRISPR/Casシステムを用いてRPS19遺伝子に変異を持つゼブラフィッシュの作製を試みた。CRISPR/Casを導入したゼブラフィッシュ胚は異常な表現型を示し、約90%は致死となった。RPS19の変異をPCRで解析した結果、多くの胚で部分欠失が認められた。現在、F1世代を解析するためにマイルドな表現型を示した胚の飼育を継続中である。 4. 新たなDBA遺伝子の同定:エクソーム解析で新たに変異が同定された2つのRP遺伝子(RPS27, RPL27)の機能解析をゼブラフィッシュで行った。ノックダウン胚ではDBA患者と同様に赤血球の減少が認められた。また、正常なmRNAの注入による造血の回復も確認されたことから、これらの遺伝子を新たなDBA遺伝子として報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
疾患モデルを用いたmRNAの翻訳効率の解析は順調に進展しており、新たな候補遺伝子も含めて8個の遺伝子の解析が進んでいる。さらに、患者エクソームの解析データにアクセスできたことから、これらの情報と併せることでより確実性の高い解析が可能となった。また、エクソームデータが新たなDBA遺伝子の同定につながったことは、当初の予定を上回る成果である。さらに、RNA修飾の解析、CRISPR/Casシステムを用いたRPS19変異体の作製も、ほぼ予定通りに進んでいる。以上のことから、研究は全体として「おおむねね順調に進展している」と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
翻訳効率が変動した8個の遺伝子全ての解析を完了する。また、エクソーム解析で同定されたその他のDBA候補遺伝子の解析を進める。さらに、ゲノム編集技術によるゼブラフィッシュ変異体(リボソーム病モデル)の確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
他のプロジェクトで類似の研究を行っていたため、消耗品や魚の飼育費などの経費が抑制され、当初見込額との間に差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
物品費は、一般的な試薬・器具の他、ゼブラフィッシュの飼育費などに使用する。旅費は、国際リボソームミーティング(ベルギー)および分子生物学会など関連学会への参加・発表のための経費として使用する。人件費・謝金は、研究を効率的に推進するために研究員および実験補助員を雇用する経費として使用する。その他の経費は、論文発表するための投稿料、学会の参加料などに使用する。
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